2003年8月6日 東京文化会館 大ホール

クレジット

振付:レオニード・ラヴロフスキー/改定振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ/音楽:アドルフ・アダン
指揮:ミッシェル・ケヴァル/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

ジゼル:アレッサンドラ・フェリ
アルブレヒト:ウラジーミル・マラーホフ
ヒラリオン:木村和夫
バチルド姫:吉岡美佳
クールランド公爵:後藤晴雄
アルブレヒトの従者:森田雅順
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):早川恵子、荒井祐子、高村順子、小出領子、大嶋正樹、後藤和雄、中島周、古川和則
ジゼルの友人(パ・ド・シス):遠藤千春、大島由賀子、福井ゆい、西村真由美、乾友子、高木綾
ミルタ:井脇幸江
ドゥ・ウィリ:佐野志織、小出領子


感想

5日前に見たAプログラムで、フェリにしてもマラーホフにしても、なんというか「オーラが不足してる」気がして、今日のジゼルは大丈夫かしらと少し心配していました。が、杞憂も杞憂!とてもよい舞台を見て感動しつつ帰宅しました。

フェリ、すごかったです。ジゼルそのものだった。1幕では本当にアルブレヒトが大好きで、瞳がキラキラ輝いて幸せそうで。だからこそ1幕の終わりでアルブレヒトの裏切りが発覚した時の哀しみ・狂気が涙を誘いました。すさまじかった・・・。2幕でのジゼルは既に精霊なので表情がありません。アルブレヒトを慈愛で包むその表情がまた・・・1幕あっての2幕、なんですよねぇ。これだけ説得力あるジゼル、そうお目にかかれません。そう、私にとってのジゼル「デフォルト」はずっと、このアレッサンドラ・フェリなんです。

踊りも(バレエを見に行って『踊りも』はないか・・でも、踊りの前に女優さんだから、フェリは)美しかったです。マラーホフとのジゼルはやはり絶品。特に2幕の、精霊の衣装のすそさばきというか、体重がないかのようにふんわりと動く様はうっとりしました。もっと美しくカンペキに踊るダンサーは他にいると思うけど、フェリのジゼルがデフォルトの私にはもうこれで大満足。美しかったです。

そしてマラーホフ。最初に出てきた時の彼は王子様そのもの。1幕でおっと思ったのは、ジゼルの投げキスを受けながら踊る部分。最後にキュっとジゼルと抱きしめて頬にキスしたのですが(東バの村娘のみなさんが「あらっ」って恥ずかしそうな演技をするのもかわいかった)これって、こういう感じだったかな。マラーホフのアレンジなのかなって思ったのだけど・・・後で確認してみましょ。

1幕の終わりの方でバチルドに対する恭しい、そしてよそよそしい態度を見た時に、ああ、マラーホフのアルブレヒトは、遊びじゃなくてジゼルが好きなんだなー、バチルドとの結婚は気が進まないのねって、ようやくわかった。確かにバチルドの吉岡美佳さんはとってもかわいらしい人だけど、他のバチルドに比べて堂々とした感じがしないというか、世間知らずのお嬢様って感じ。フェリのジゼルの方が(病弱なハズなのに)生命感にあふれてたもん。アルブレヒトにはさぞ魅力的だったハズ。

で、ジゼルが発狂した後のアルブレヒトは、何度も彼女に駆け寄ろうとするのだけど、従者に止められてそばにいけない。それも痛々しかった。ジゼルが絶命した後、抱き寄せて悲嘆にくれるのだけど、結局そばに居続けることができなくて、走り去ってしまう。うー、そうなんだ。

一方、ヒラリオンは全身で嘆きを表して叫び泣いてる。あ、とっても人間的なヒラリオンだなー。ヒラリオンという役どころは、バレエの登場人物の中でも一番ついてないというか貧乏くじ引かされる人だと思うんだけど(好きな人を伯爵に横取りされ、その娘は死に、お墓参りに行った森の中で森の精霊たちに死ぬほど躍らされた上に沼に突き落とされて絶命する)、何故かちょっと同情できないところがあって。でも、木村和夫さんのヒラリオンはちょっとかわいそうでした。2幕の踊りもよかったし、ミルタとの対峙もよかったし。

そのミルタ、井脇幸江さんは本当によかったです。彼女は自分のホームページで日記を書いていらっしゃって、その中でミルタに対する意気込み綴ってらしたのを読んだ時に「この『ジゼル』絶対見にいきたい!」と思った、という経緯もあり、すごく楽しみにしてたんです。『ジゼル』のお楽しみに、このミルタの「ダメ!」のポーズがあるのですが、いやー、ぞくぞくしました。コワイ顔とか全然してないし、精霊のはかなさの中にいるのに、こんなにはっきりした拒絶があるのか、と。私のベスト・オブ・ミルタは、先日スタダンから新国立に移った厚木三杏さんなのですが、井脇さんもよいなぁ。

ドゥ・ウィリでは、小出領子さんがよかったです。小柄だけど、とても綺麗に踊る人なのね。1幕ではパ・ド・ユイットでも踊っていて、大車輪の活躍ですね。パ・ド・ユイットでは早川恵子さんがよかったです。今日で退団だなんてもったいない・・・荒井祐子さんはどこにいても人目を引く華やかさがありますね。男性陣では大嶋さんと後藤和雄さんがよかったです。後藤さん好き。

2幕に話を戻して、マラーホフが百合を抱えて登場するところ、やはり美しかった〜。こうじゃなきゃ!という感じ。ミルタに踊らされるマラーホフはすばらしかったです!あまりにスムーズに踊るので、難しいステップも簡単に見えちゃうくらい。フェリとのパ・ド・ドゥは言うまでもなく。このまま終わってしまうのがもったいない!ずっと見続けていたいと思う舞台でした。

ウィリたちの群舞は、足音がちょっと・・・と思いましたが、綺麗に揃っていました。あの「ザッザッ」て足音がなければねぇ、ホントにいいのになー。

カーテンコールの数もすさまじく、客電がついても拍手は鳴りやみませんでした。一体何回くらいしたかしら。1階は全てスタンディングオベーション。隣の隣に「ブラボーおじさん」がいたのには閉口しましたが、本当に感動的な舞台でした。

客席にはバレエフェスに参加しているダンサーたちも多く見受けられ、一緒に指揮者のソトニコフさんもいらしていたのですが、2幕が始まる前にご挨拶してらして会場から拍手がわいてました。ソトニコフさんっておちゃめなんだなー。

とにかく、フェリのジゼルに「間に合って」、マラーホフのアルブレヒトに「間に合って」嬉しかった・・・しみじみといい舞台でした。