2003年8月9日 東京文化会館 大ホール

クレジット

指揮:ミッシェル・ケヴァル、アレクサンドル・ソトニコフ/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

第1部

「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
タマラ・ローホ(英ロイヤル・バレエ)/ホセ・カレーニョ(アメリカン・バレエ・シアター)

Aプロで足の強いところを見せてくれたタマラ・ローホとエレガントで素敵だったカレーニョ、いきなり最初に登場だなんてもったいない!でも、個人的にはこの2人のおかげでグンと気持ちが盛り上がりました。カレーニョはやっぱり素敵。3階の左サイド席にいた為ジャンプの高さはわかりにくかったのですが、踊りのエレガントさダイナミックさだけでなく、見る側を「物語」にすっと入れてくれる表情がよかったです。ローホは、最近長身のダンサーが多い中で、小柄なのに周りの空間を大きく使える人ですね。とても足が強くてテク先行の人かと思うと、ちゃんと隅々まで行き届いて綺麗に踊る人。妖艶な笑みを浮かべて王子を誘惑する様がこれまた素敵でした。白鳥はどんなふうに踊るのか、ぜひ全幕で見てみたいなー。カレーニョとのパートナリングで、ぜひ日本で踊ってほしい!

「小さな死」

振付:イリ・キリアン、音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
オレリー・デュポン/マニュエル・ルグリ(パリ・オペラ座バレエ)

Aプロのキリアン作品に感動したので、楽しみにしていました。キリアンからオレリーとルグリに贈られた作品だそうで、全ての動作に説得力があるというか・・・振りをなぞるというより、体の内側から自然に出てくるものに任せて踊っているような。息もぴったりで、難しいことはよくわからないけれど、体の芯を揺さぶられる作品でした。オレリーは現代作品がとても似合います。これももっと見ていたかった。

「海賊」

振付:マリウス・プティパ、音楽:リッカルド・ドリゴ
バルボラ・コホウトコヴァ(ボストン・バレエ)/イナキ・ウルレザーガ(英ロイヤル・バレエ)

コホウトコヴァのピルエット、それぞれ何十度かずつ多めに回っていたようです。テクのある人なのはわかるのですが、技に偏りすぎちゃったかも。ウルレザーガは・・・がんばってました。でも、私はごちそうさま。


第2部

「ラ・シルフィード」

振付:オーギュスト・ブルノンヴィル、音楽:ヘルマン・S.レーヴェンスヨルド
マリーヤ・アレクサンドローワ/セルゲイ・フィーリン(ボリショイ・バレエ)

フィーリンのジェームスはとっても素敵でした。アレクサンドローワも踊りは綺麗だったと思いますが、首のラインがちょっと前に出過ぎて美しくなかったような。背が高いのでそれを気にしてのことでは?という話をどこかで見ましたが、だとしたら私もその気持ちは覚えがあるので・・・。でもちょっともったいなかったな。

「夏」

振付:ジェームス・クデルカ、音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
グレタ・ホジキンソン(カナダ・ナショナル・バレエ)/ロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座バレエ)

以前テレビで、カナダ・ナショナル・バレエの「四季」を見たことがありましたが、その中の「夏」を生で見ることができました。ホジキンソンは、動作の1つ1つに説得力があって、振りを全て自分の血や肉に置き換えて踊れる演目を持ってきたなと思いました。ボッレとのパートナーシップはAプロではどうかな?って首をかしげるところがありましたが、こちらはボッレもよかったです。惹きつけられました。

「レ・ブルジョワ」

振付:ベン・ファン・コーウェンベルグ、音楽:ジャック・ブレル
フィリップ・バランキエヴィッチ(シュトゥットガルト・バレエ)

Aプロですっかりお気に入りになったバランキエヴィッチ。ジャック・ブレルの「ブルジョワの嘆き」に合わせて登場しました。このプログラムで彼を好きになった人、いっぱいいるハズ。チャーミングで芝居っ気があって、最高です。あー、もっとたくさん日本に来て来て!

「ライモンダ」

振付:マリウス・プティパ、音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・ウヴァーロフ(ボリショイ・バレエ)

ウヴァーロフ、かっこいい〜。なんてノーブルなんでしょう。ロシアの王子様って感じ。ジャンプの高さがわからない席なのが返す返すも残念。ステパネンコも少しお疲れのようでしたが、美しかったです。ライモンダも全幕で見たいなぁ。

第3部

「パキータ」

振付:マリウス・プティパ/ピエール・ラコット、音楽:ルードヴィッヒ・ミンクス
アニエス・ルテステュ/ジョゼ・マルティネス(パリ・オペラ座バレエ)

東バのコールド付きで華やかでした。ルテステュが出てくると、本当に舞台が華やぎます。マルティネスもいいですよねぇ。この2人はバレエの「華」を味わせてくれます。だから、こういう華やかな演目がいいのね、きっと。

「葉は色あせて」

振付:アントニー・チューダー、音楽:アントニン・ドヴォルザーク
アレッサンドラ・フェリ(ミラノ・スカラ座バレエ/アメリカン・バレエ・シアター)/マルセロ・ゴメス(アメリカン・バレエ・シアター)

ゴメス〜。会いたかった〜。前回の来日時に比べてちょっと顔つきがシャープになったような気がしましたが、とっても優しげにフェリをサポートしていて、うっとりしました。フェリもゴメスと踊るの、楽しそうでしたよ。この演目は「アメリカン・バレエ・シアター・ナウ」という映像にアマンダ・マッケローとダンナが踊っているのが収録されていますが、フェリとゴメスもとってもよかったです。ABTの男性陣のサポートって、パートナーへの愛情を感じてとっても好きなんだなぁ、私。

「ロメオとジュリエット」より 寝室のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ)

ノイマイヤー版のロメジュリは初めてですが、とってもよかったです。何と言ってもハンブルク・バレエの2人ですから、踊りに説得力があってこちらも自然に入り込めました。リアブコのロメオは、今まで見たどのロメオよりも「陽気な街のあんちゃんが恋に熱くなってる」感があって好きだなぁ。ノイマイヤー版のロメジュリも全幕で見たくなっちゃったじゃん・・・

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

振付:ジョージ・バランシン、音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ(マリインスキー・バレエ)/ウラジーミル・マラーホフ(ベルリン国立歌劇場バレエ)

これぞ正統派のバランシンって感じなのかな。Aプロのペアは盛り上がるけど観光客向けっぽい感じだったのですが、こちらは入り口をノックして服装をチェックされるブランド店みたいなすばらしさ。マラーホフはヴィシニョーワと踊るの楽しいんだろうな。間違いなく今一番旬で華やかなダンサーだし。うっとりと見ほれました。

第4部

「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」

振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:トム・ウィレムス
アリシア・アマトリアン/フリーデマン・フォーゲル(シュトゥットガルト・バレエ)

これがあのAプロ「ジゼル」ペア?という驚き。すごいっ!フォーゲルくん、イケメンじゃん。王子様だけでなくフォーサイスもイケるのねぇ。アマトリアンもこちらの方がいい。こうして思い返すとAプロペアのこの演目もちょっと大人の雰囲気でよかったのだけど、こちらは本当に若さでぐいぐい押されました。できればもう少しアバンギャルドな雰囲気を漂わせてほしいところですが。シュトゥットガルトはいいねぇ。今度はいつ日本にくるのかな。待ち遠しくなりました。

「マノン」より 沼地のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン、音楽:ジュール・マスネ
シルヴィ・ギエム(英ロイヤル・バレエ)/ニコラ・ル・リッシュ(パリ・オペラ座バレエ)

始まった瞬間から2人のドラマに引き込まれて、胸が痛くなってきました。別格の2人です。もしこの2人が最後だったら、きっと自宅まで悲劇を引きずって「お祭り」どころじゃなくなっちゃう。でも、他の演目の合間に抜粋だけ見せられるのはつらすぎる。やーん、もう全幕で見せてよ〜。最後のニコラが号泣するところ、こちらが泣いちゃいましたわ。ああ、ニコラ。

「ヨカナーン」世界初演

振付:モーリス・ベジャール、音楽:リヒャルト・シュトラウス
ジル・ロマン(ベジャール・バレエ)

ギエムとニコラの後にジル・ロマン。切り替えが大変です。もともとは「サロメ」を踊る予定だったようですが、世界初演の「ヨカナーン」に変更されていました。「サロメ」は見たことがないのですが、ある意味表裏一体の作品、でしょうねぇ?ロマンの表情のせいか、私がベジャールに持つ印象のせいか、非常に宗教的で(オペラグラスで見ていたら、ロマンの口が「南無阿弥陀仏」とゆっくり動いたように見えた個所があった)何からか逃れようとする苦悩を表しているように見えました。ステージにオーブリー・ピアズリーの(ヨカナーンの首を持ったサロメを書いた)大きな絵があり、ロマンはそれにおびえるように絡められるように踊ります。最後にその絵に飛び込んでサロメの呪縛から解き放たれる(たぶん)のですが・・・うーん、どうして追いかけて正体を暴きたくなってしまうのだろう。

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ、音楽:ルードヴィッヒ・ミンクス
アリーナ・コジョカル(英ロイヤル・バレエ)/アンヘル・コレーラ(アメリカン・バレエ・シアター)

さあ、Bプロのフィナーレです!何て楽しそうに踊るのでしょう、コレーラったら。コジョカルを片手でリフトしての6時のポーズが2度入って、会場がざわめきました。回転も相変わらず駒のように早くて、こういうお祭り演目なら任せろ!って感じですよね。ABTがドンキ持って来日してくれたらいいのにー。コジョカルのキトリも本当に愛らしくてよかったです。彼女も小柄だけれど、空間を綺麗に使えるダンサーですよね。最後のお祭り騒ぎ、十分堪能しました。あー、もっと見たいっ。


バレエのオーケストラはホルンがけっこう肝なんですよね。そして何故かミスが多い。今回もけっこう耳につきました。あと弦楽器とフルートのユニゾンでピッチが合ってなくて気持ち悪かったり。オケのみなさんもハードだと思うのですが、音楽ってすごく大事だから期待しちゃうんですよね。もっともっと、と。

そしてダンサーたちのステージ裏での努力の積み重ねや研鑽を思うと、こんなに簡単に褒めたりけなしたりしていいハズがない、とも思います。けなすのではなく、いいところを残してあげたいと思うのですが、そのためにも見る側も「見る目」が必要だなーとひしひし感じます。

もう1つ、バレエを見てきて最近痛感するのが、自分の基礎知識のなさ。もちろんバレエの用語もそうだし、音楽の使われ方や演目の中での踊りの順番とかもあまり定かじゃないし。そして今回のジル・ロマンの作品のような宗教的な背景とか、文学的な知識とか。もっと深く味わうために、バレエだけじゃなくその背景もちゃんと知っておきたいな、としみじみ思いました。ただ見てるだけだと、本当にあっという間に終わってしまうから、もっと味わいつくしたい。