2003年11月1日 新国立劇場オペラ劇場

クレジット

振付:サー・ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:レイトン・ルーカス、ヒルダ・ゴーント/演出:モニカ・パーカー、パトリシア・ルアンヌ/監修:デボラ・マクミラン/舞台装置・衣装提供:英国ロイヤルバレエ
指揮:バリー・ワーズワース/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

マノン:酒井はな
デ・グリュー:ドミニク・ウォルシュ
レスコー:ロバート・テューズリー
ムッシューG.M.:ゲンナーディ・イリイン
レスコーの恋人:湯川麻美子
娼家のマダム:大塚礼子
物乞いのリーダー:吉本泰久
看守:山本隆之
高級娼婦(一幕):厚木三杏、西山裕子、大森結城、楠元郁子
高級娼婦(二幕):厚木三杏、大森結城、寺島ひろみ、西山裕子、楠元郁子
女優(一幕):西川貴子、鹿野沙絵子、寺島ひろみ、真忠久美子
女優(二幕):西川貴子、鹿野沙絵子、真忠久美子
紳士:奥田慎也、冨川祐樹、マイレン・トレウバエフ


感想

さて、今日の私の注目点はデ・グリューとレスコーの役が(先日見た時とは)入れ替わっていること、マノンを酒井はなが踊ること、そして看守を山本隆之が踊ること。

前回より更に舞台に近い席で、オペラグラスは必要なかったのはよいのですが、手前でダンサーが踊っていると、奥行きのあるステージの奥の方で展開されてる「マノンとデ・グリュー」の出会いとかが見られなかったり。ちょっと失敗したかなぁ。

酒井はなのマノンは、踊りはとてもよかった。体の線もきれいだったし、よくぞここまでがんばりました賞をあげたい。でも、マノンとしては・・・うーん、どうなんだろう。人の目をひきつけてしまう艶の持ち主というよりは、ガラスケースの中の綺麗なお人形。フェリの雄弁な表現を見たあとでは伝わってくるものが淡泊すぎて、分が悪いのは気の毒だけど、残念な限り。

ウォルシュのデ・グリューも、うーんやっぱりこの人はレスコーが合うでしょうって感じで違和感。失礼ながらテューズリーほど「高貴感」プンプンって感じではないので、神学生に見えるといえば見える・・・かなぁ。1幕のソロはやっぱり綺麗に決まらなくて、これはもう振付が難しすぎるに違いない、ということで納得することに。踊りはなんだかピンとこないのだけど、やっぱり役者というか感情表現が秀逸で、その辺は魅せてくれたと思う。

ただ、酒井はなとのパートナーシップという点では、けっこうよかったのでは?という気がした。イレールのキャンセルで急ごしらえのパートナーにしてはよくがんばっていたと思う。このペアの2幕のコートを着る場面は、なんというか普通に「それが振りで決まってるから」着せてあげる感じ?フェリのすごさが逆に印象に残る場面だった。

そしてテューズリーのレスコーは・・・うーん。小悪党というには「腹にいちもつ感」が足りないかなぁ。憎めない感じはあったけど、殺される羽目になってもあまりかわいそうな気がしないというか。酔っ払いのソロやパ・ド・ドゥもがんばっていたけど、ウォルシュのレスコーがよすぎたからなぁ。ウォルシュがデ・グリューとレスコーを踊ることになったのは急は話だったけど、テューズリーは元々そういうキャスティングだったのだし、前のインタビューを読んで期待もしていたんだけどなぁ。ちょっと残念。

そして3幕。山本隆之の看守は、前日のガリムーリンの尊大で好色そうなたたずまいに比べると、もっとなんというか「ま、これ(女性を陵辱する)も仕事だからな」って感じの倦怠(というかもっと強い感情なんだけど・・・言葉が見当たらず)が感じられた。けっこう表情をつくってやってたと思うんだけど、それがちょっと「つくってる」印象になってしまった気も。いや、でも表情かえずにこれだけのことしちゃうのって、ある意味「人」としていっちゃってるかも・・・いずれにせよ、ガリムーリンとは全く違うアプローチだった。

と、まぁ、ここまでは「うーん、ちょっとなぁ」だったこの日のマノン。最後の沼地で印象がガラリと変わったのだった。酒井はなも消えそうな命の中で愛を表現しきるマノンとして、痛々しくも強い愛を感じられたし、何と言ってもウォルシュがすばらしいっ。悲痛なまでの感情表現に打たれました。前日のテューズリーの時は「じんわり」程度だった涙が、この日はあふれてきちゃって困ったのよ。すごく感動的な幕切れ。

そのせいか、それとも熱心なファンの多い酒井はなのおかげか、カーテンコールはすごかった。新国立劇場の「マノン」の成功を祝福する拍手だったのかも。

酒井はなとウォルシュは感激してキスを数回かわしてたけど、あれは私の見たところ酒井はなのおねだりって感じ?テューズリーもそんな2人を見つつさわやかにニコニコ笑っていて、あれは4日間が無事に終わった達成感なのか、それとも急な代役を無事にこなしたウォルシュの成功を自分の事のように喜んでいたのか。なんというか、さわやかなカーテンコールだった。