2003年11月3日 東京文化会館 大ホール

クレジット

指揮:ダニエル・バレンボイム/演奏:シカゴ交響楽団

演目とキャスト

「春の祭典」

音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー/振付:モーリス・ベジャール

生贄:後藤和雄
二人のリーダー:後藤晴雄、芝岡紀斗
二人の若い男:中島周、平野玲
生贄:井脇幸江
四人の若い娘:佐野志織、高村順子、門西雅美、小出領子

「火の鳥」

音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー/振付:モーリス・ベジャール

火の鳥:木村和夫
フェニックス:後藤晴雄
パルチザン:吉岡美佳、小出領子、長谷川智佳子、大嶋正樹、古川和則、倉谷武史、平野玲、中島周

「ボレロ」

音楽:モーリス・ラヴェル/振付:モーリス・ベジャール

シルヴィ・ギエム
飯田宗孝、森田雅順、木村和夫、後藤晴雄


感想

シカゴ響が初めてオケピに入るということで、クラシックファンもけっこう多かった様子。普段のバレエ公演とは明らかに客層が違う。オケピの前には鈴なりの人であった。きっとオーケストラのみなさんは動物園のパンダになった気分だったろう。

「春の祭典」も「火の鳥」も見るのは初めて。予備知識もゼロ。ストラヴィンスキーの曲の方も、実はあまり食指が動かないタイプの曲だった。それでも、ベジャールは自分の作品の音楽にテープ演奏を指定している人だから、生オケでベジャールが見られる機会なんて稀有であって、最初で最後くらいの経験になりそうだとドキドキしてた。

実際生で聴いてみたらシカゴ響の「ハルサイ」はすばらしかった。今まで聴いてきたバレエのオーケストラってひどかったのね、と。そして、世界で唯一ベジャールの「ハルサイ」上演を許可されている東バもすばらしかった。ライトの中で飛び散る汗までも演出の1つになるのはベジャールならではだね。力強くて時に残酷な男性群舞、うちに強さを秘めた静けさの女性群舞。中でも生贄の井脇幸江のすばらしいこと。後藤和雄も好きなダンサーだけど、生贄に選ばれちゃいそうな彼のちょっと優しい面が(って、どんな人か知らないけどさ)クローズアップされているようで、面白かった。前日に生贄を踊った首藤康之も見たかったけどねぇ。

カーテンコールでよくわかったのが、彼らの中心にいるのは井脇幸江だということ。顔を見合わせて力強く頷きあい観客に応える姿が、ちょっと体育会入ってたような。井脇幸江のさっぱりした性格がよく現れたカーテンコールだった。

「火の鳥」の音楽もすばらしかった。すばらしい、という表現しかできない自分が情けないけど、バレエがなくても音楽だけで感動できる位。「ハルサイ」もそうだったけど、それだけの音楽に乗って東バも生き生きと踊っていて、1+1が3にも4にもなった感じ。

火の鳥で出演予定だった首藤康之が出ていなかったのがとても残念。でも、木村和夫もがんばってた。パルチザン(革命家)では吉岡美佳の視線の強さが印象的。ほっそりとした女性的な人だと思っていたけど、芯が強い人なのね。

そしてボレロ。前日のオケがぼろぼろだったと聞いていたのでどうなることかと思ったけど、今日はそんなひどいことにはなってなかったと思う。曲の後半、目に見えてテンポが早くなっていたので、踊る方は大変そうだったけど・・・それが見てる方にも息苦しさを与えて、最後のフィナーレは爆発的なすごさを与えたのかもしれない。でも、ギエムがジャンプ2つを1つに省略したりしてたので、これはバレエとしてはどうなのかなーと思わないでもない。でも、そんなことはどうでもいいくらいに圧倒された。

ギエムのメロディは初めて見た。けっこう淡々としてたかな。躍りを捧げる巫女さんみたいな印象。プリセツカヤのビデオでは彼女のあの目線でリズムを挑発している感じだったけど、ギエムは、目の力というより自分の長い手足と降ろした長い髪で周りの空気をかき混ぜてギエムの存在でいっぱいにしてしまって、それが挑発になってるというか。まどろっこしい説明だなぁ、全く。

バレエに夢中になっていると、オケの演奏は意識の下に入ってしまって耳に残らないことがあるのだけど、シカゴ響の演奏は、バレエに夢中になってるこっちの意識のすき間にぐいぐい入り込んでくる。息ができなくなる程に目と耳をフル稼働させて、私も果てた感じ。すごく贅沢な公演だった。