闘う白鳥―マイヤ・プリセツカヤ自伝

著者:マイヤ・プリセツカヤ/訳:山下健二
発行:(1996.06)

片手で持って読んでいるとその手が腱鞘炎になる程に重たい本ですが、すごく面白かったです。最初はその文章のスタイルに慣れずに読みにくさを感じたのですが、それに慣れたら面白いこと面白いこと。バレエに関する人の自伝や他人が書いた本などいろいろ読みましたが、自伝の方が基本的に面白いですね。そして、この本は特に。

ロシア(ソ連)という国で言いたいことをいい、踊りたいものを踊るということが、ほとんど不可能だった時代に、呼吸をするのと同じ自然さでそれを欲したプリセツカヤは、正に闘いの人生を生きてきたのですね。まっすぐでせっかちな愛すべきプリセツカヤ、ずっとそんなに好きなタイプじゃないと思っていたけど、この本を読んで考えを改めました。

あのプリセツカヤが自分に基礎が足りないと悩み続けたこと、結婚の本当に初期の段階で子供よりバレエを選んだこと、海外で踊るための許可を得るために苦労した長い期間のこと、自分の為のバレエ「カルメン」を作り上演するためにまた上層部と闘わなければならなかったこと、などなど知らなかった側面、ぼんやり知ってただけの事を生々しい記述で知り、まるで彼女の半生を共に生きてしまったかのような読後感でした(もちろん、本の最後は明るい希望と旅立ちの話なので助かりましたが)。

彼女のためにシチェドリンとの出会いを喜びたいと思います。彼がいるから乗り越えられたことがどれだけ多かっただろうかとも思うし、だいたい、夫について書く彼女の文章から大きな信頼と深い愛情が溢れていてよけきれない程ですからね。