2005年11月10日 東京文化会館 大ホール

クレジット

振付:ジョン・クランコ/音楽:P.I.チャイコフスキー/編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ/装置・衣装:ユルゲン・ローゼ

指揮:ジェームズ・タグル/演奏:東京ニューシティ管弦楽団

キャスト

オネーギン:マニュエル・ルグリ
レンスキー:ミハイル・カニスキン
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィザム
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エレーナ・テンチコワ
乳母:ルドミラ・ボガート
グレーミン公爵:イヴァン・ジル・オルテガ


感想

まだ見ぬ大作、という認識でいたので、2回の休憩を入れても2時間少々というコンパクトな上演にはいささか驚きました。まぁ考えてみたら、原作だって決して分厚い本ではありませんものね。夢のようにあっという間に終わってしまいましたが、中味の濃い、心を動かされる公演でした。どうせなら4公演くらい(貸し切り抜きでね)上演してくれればよかったのにー。

パリオペの輝けるエトワールであるルグリと、素朴さを感じさせるシュツットガルト・バレエとの共演には、オネーギンと土地の人々との温度差/感覚の差に通じる違和感がありました。それは見ていて困惑するものではなくて、むしろ作品世界に共通するものとして好もしく受け取れるものでした。

ルグリは怪我の影響を全く感じさせない大熱演。特にアイシュヴァルトとのパートナーシップは見事でした。タチヤーナ役をすっかり我が物としている彼女がお相手で、ルグリの役作りの完成度が更に高まったのではないかしら。1幕での虚無感、2幕でのいらつきやあの手紙を破るところ!3幕での熱病に浮かされたようなタチヤーナへの執着。初演としてはこの上ない深いものを見せてもらえたと思います。できることなら今後も踊る機会を得て、更に深く役を作ったところをもう1度見せてほしい〜。パリ・オペにも許可すればいいのにねー、クランコ財団。

アイシュヴァルトは本当に見事なタチヤーナでした。背中や脚も強いんですね。リフトされて上げる脚やのけぞる背中に陶然としましたよ。彼女は1幕でオネーギンに伴われて歩くときの、オネーギンの腕に手を触れたいけど触れられず、、、みたいな表現が絶妙でした。クランコの振付もよいのでしょうけど、これですっかり彼女に感情移入。なので、3幕のパ・ド・ドゥで、オネーギンを愛しく思っているのに拒絶しなければならない、手紙を破って渡さなければならない状況には心底泣けました。音楽もすごくよかったし、、、圧巻でした。

レンスキー役のカニスキンは詩人というには地に足がつきすぎているような雰囲気(笑)でしたが、とはいえ若き領主さんだからねー。恋に夢中の青年としては好もしかったです。オリガ役のテンチコワも好演で、恋する女の子の甘さが秀逸。彼女のジュリエットが楽しみになりました。それと、グレーミン公爵のイヴァン・ジル・オルテガ。彼とタチヤーナのパ・ド・ドゥも甘くてとっても素敵でした。

美術も気に入りました。さすがユルゲン・ローゼ。絶対に失望はしないとわかっていましたが、場の展開も途切れないし、田舎の風景、決闘の場の寒々しさ、公爵邸の華やかさ、、、1/2幕と3幕の衣装の対比も含めて見事でした。1/2幕と3幕といえば、同じ舞踏会でも田舎と都会では振付や音楽も全然違っていましたね。振付/美術とも、40年前の作品ですからそりゃあ確かに多少の古さは感じますが、それ以上に魅力があります。ところどころ「マノン」を連想させる場面があって、マクミランがこの作品に影響されて「マノン」を作ったというのもよくわかりました。

ルグリのオネーギンには大満足です。が、できればオール・シュツットガルトでもこの作品を見てみたかったです〜。今回は叶わなかったので、またそう遠くないうちに「オネーギン」持ってきてくださいな。お願いします。