2006年6月25日新国立劇場オペラ劇場

クレジット

振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン/台本:テオフィール・ゴーチェ、ヴェルノワ・サン=ジョルジュ、ジャン・コラリ/改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ/監修:ナターリヤ・ドゥジンスカヤ/舞台美術・衣装:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:沢田祐二
指揮:エルマノ・フローリオ/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

ジゼル:さいとう美帆
アルベルト:山本隆之
ミルタ:川村真樹
ハンス:冨川祐樹
クーランド公爵:ゲンナーディ・イリイン
バチルド:湯川麻美子
ウィルフリード:陳秀介
ベルタ:神部ゆみ子
村人のパ・ド・ドゥ:大和雅美、江本拓
ジゼルの友達:遠藤睦子、高橋有里、寺島ひろみ、内冨陽子、川村真樹、寺島まゆみ、丸尾孝子、難波美保
ワルツ:安井紫、今村恵、岸川章子、北原亜希、工藤千枝、下拂桃子、杉崎泉、田中若子、中島郁美、柳井美紗子、伊藤真央、酒井麻子、高井香織、寺田亜沙子、細田千晶、堀口純
村の娘たち:今村恵、岸川章子、北原亜希、工藤千枝、下拂桃子、杉崎泉、田中若子、中島郁美、酒井麻子、寺田亜沙子、細田千晶、堀口純
村の若者たち:奥田慎也、グリゴリー・バリノフ、陳秀介、江本拓、中村誠、高木裕次、冨川直樹、ハンガイ・アルガイスフ、井口裕之、佐々木淳史、澤田展生、柄本武尊、泊陽平、アンダーシュ・ハンマル、八幡顕光(交替出演)
貴婦人:湯川麻美子、真忠久美子、寺島ひろみ、西川貴子、楠本郁子、千歳美香子、深沢祥子(交替出演)
廷臣:市川透、奥田慎也、マイレン・トレウバエフ、貝川鐡夫、冨川祐樹、小笠原一真、エリク・T.クロフォード
ラッパを持つ猟師:冨川直樹、ハンガイ・アルガイスフ、柄本武尊
鳥を持つ猟師:荒幡大輔、アンダーシュ・ハンマル
槍を持つ猟師:魚住哲夫、大春智哉、川嶌英文、蓬莱大介
バッカスの少年:折原由奈、武田麗香(交替出演)
ドゥ・ウィリ:寺島まゆみ、遠藤睦子
ウィリたち:内冨陽子、楠本郁子、丸尾孝子、大和雅美、神部ゆみ子、難波美保、今村恵、岸川章子、北原亜希、工藤千枝、下拂桃子、杉崎泉、田中若子、千歳美香子、中島郁美、深沢祥子、堀岡美香、柳井美紗子、伊藤真央、酒井麻子、高井香織、寺田亜沙子、細田千晶、堀口純


感想

昨日は「鮮やか」な公演でしたが、今日は「穏やか」な公演でした。

さいとうさんは邪気のないジゼル。1幕でアルベルトとの「帰る帰さない」のやりとりが女の手練手管になるジゼルもいるけど、彼女のそれは本当に「好きだけど何だか恐い」という感じ。そして壊れ物のような繊細さがありました。踊りも雰囲気も柔らかいので「ガラスのような」というのとは違うんだけど、、、霞のような、かな?好きな人がいて好きな踊りもできて体全体が幸せだと言っているのに、儚く見えるというか。

ひとしきり踊った後に母親のベルタが出て来て、友人たちが彼女を隠す場面がありますよね。アルベルトと背中合わせにして隠れるところ。私、この日の公演を見るまでずっと「男性と一緒にいるところを見られてバツが悪いのかな?何で隠れてるのに途中で出てくるのかしら」って思っていたんです(笑)。でも、この日のさいとうさんを見て遅まきながらようやくわかりました。普段から母親に「体が弱いのだから踊ってはダメ」と言われているのに踊ってしまったから、アルベルトの影で身だしなみと息を整えてから母の前に現れる、ということだったんですね。目から鱗。っていうか、気付くの遅すぎ(笑)。

山本さんのアルベルトは、優しそうな青年でした。ジゼルと一緒の時は本当に優しいの。で、ウィルフリードやハンスに対する威厳のある態度と全然違って微笑ましかった。頻繁に上演する「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」などから比べると役作りや踊りには工夫の余地がありそうですが、たぶんそれは、初役のさいとうさんをサポートすることに心を砕いていたからだろうと思います。すごーく丁寧にサポートしていて、それが更にさいとうジゼルの「壊れ物」感を増幅していました。舞台としてはとてもバランスのよい上演だったけれど、山本アルベルトを楽しみに足を運んだ身としては彼自身の解釈をもう少し見てみたかったかなぁ。

ハンスは冨川祐樹さん。昨日の市川ハンスはアルベルトが現れる前はジゼルといい線行ってたんだろうなーという気がしたのですが、今日の冨川さんは地に足をつけた森番そのもの。霞のようなジゼルとは言葉はかわしても通じ合うところまでは行かなかったんだろうな、と。だから、ジゼルの家の玄関にさした花束が気付かれることなくその場に残っていたのに気付いた市川ハンスは自分の気持ちが受け取られなかったことにショックを受けて悔しがり、冨川ハンスは「やっぱりダメだったか・・・」という風に見えたのかな。

バチルドは湯川麻美子さん。私の好みからすると、マイムが少々強すぎたかな。結婚前の令嬢というより女帝みたいだった。ペザント・パ・ド・ドゥは大和雅美さんと江本拓さん。江本さんの踊りはさわやかでアームスの使い方も綺麗なんだけど、サポートはもう少しがんばりましょう、かな。大和さんはよかったです。

本日のミルタは川村真樹さん。彼女も美しいパ・ド・ブーレで登場しました。アームスとか脚の高さとかが本当に好みのダンサーなので見ていて至福でした。ソロは少し固かったかなという気もしますが、ウィリたちをひきつれて踊るところなどは鳥肌が立つほど素晴らしかったです。彼女の踊りを堪能できて満足。今日のコール・ド・ウィリはアラベスクで進むところの脚を少し下げていました。たぶん、フローリオさんの早いテンポに合わせるためにそういう指示が出たのではないかな(全員が前日より下げていたから)。昨日みたいに音の早さにバラつくことはなかったけど、うう、あの見事に床と水平な脚のラインがよいのにー、、、残念です。マエストロに合わせてもらうのが筋なのでは?と思うのは私だけ?

2幕のさいとうジゼルがまたよかったです。山本アルベルトへの包み込むような愛情は、死による成熟(という言い方は変かもしれないけど)を感じられました。最後にセリで下がる前、昨日の本島さんはアラベスク・パンシェしていたけど、さいとうさんはしなかったね。彼女が去ってしまってからのアルベルトはその場に跪いてユリの花を抱えて嘆く、というエンディング。新国立劇場らしい暖かさに包まれた公演だったと思います。