2006年12月15日 新国立劇場オペラ劇場

クレジット

振付:フレデリック・アシュトン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/監修・演出:ウェンデイ・エリス・サムス/舞台美術・衣装:デヴィッド・ウォーカー/照明:沢田祐二/装置・衣装制作:英国ロイヤルバレエ
指揮:エマニュエル・プラッソン/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

シンデレラ:アリーナ・コジョカル
王子:フェデリコ・ボネッリ
義理の姉たち:マッシモ・アクリ、篠原聖一
仙女:湯川麻美子
父親:石井四郎
ダンス教師:吉本泰之
仕立屋:澤田展生
洋服屋:神部ゆみ子、楠本郁子
靴屋:高木裕次
床屋:佐々木淳史
宝石屋:井口裕之
御者:末松大輔
春の精:西山裕子
夏の精:西川貴子
秋の精:高橋有里
冬の精:寺島ひろみ
道化:八幡顕光
王子の友人:陳秀介、冨川祐樹、江本拓、中村誠
ナポレオン:吉本泰之
ウェリントン:市川透


感想

久しぶりの「シンデレラ」、とても楽しみでした。コジョカルは新国立劇場へようやく初登場を果たし、昨年のロイヤル・バレエ来日公演「シンデレラ」も降板していた訳ですから、期待は高まります。マリインスキーにあれだけ没頭した後で、他のバレエ団を見てどう思うのか自分でもちょっとだけ心配だったのですが(笑)、全く毛色の違うアシュトンだったのがよかったみたい。全く別のものとして楽しむことができました。

コジョカルのシンデレラはとてもキュート。スカーフやほうきなどの小道具の扱いが少々雑で(うっとり眺めるような代物であるスカーフを無造作にぱさっと投げ置いちゃいけないと思うんだけど、そういうのを気にするのは日本人だけなのかしら)「義姉さんが見てないところではお掃除さぼってるでしょー(笑)」って感じに見えましたが、そういう意味では現代っ子なシンデレラなのかも。スカーフを肩にかけてうっとりしている所へ義姉が入ってきて慌てて暖炉前に飛んでいって掃除している振りの所なんかホントに可笑しくて可愛くて、意外なコメディエンヌ振りを見た気がしました。

世界バレエフェスでも感じた通り彼女の音の取り方は独特で、都さんや志賀三佐枝さんのシンデレラが焼き付いている私として少し収まりが悪くは感じてしまいました。チュチュで踊る2幕や3幕後半はそうでもないのだけど、ボロを着てのソロが続く1幕と3幕前半がね。それでも、彼女の輪郭のはっきりした溌剌とした踊りは見ていて楽しいです。

彼女とボネッリは今のロイヤルの衣装を持って来ていましたが(主役だけなら注意して見ないとわからない)翌日の新国立の衣装と見比べると、ボロ服は今のロイヤルの方がトロみのある生地なのね。新国立のはもっと目の粗い(風に見える)麻とかコットンとかの素材っぽい。実際にそうかどうかはわからないけど、そういう実用的な服に見える。だからコジョカルが踊ると服がふわっと膨らむのが優しく見えて、現代っ子ぽいコジョカルの踊りを包み込んでいるようでした。

チュチュ姿で舞踏会に登場すると本当に華やか。ポワントで階段を降りてきたあと「なんて素晴らしいところなのかしら」という風に周囲を見上げるところがありますが、ただ夢見る表情なのではなく自分の不遇と比べての痛みが見え隠れするところが絶妙。こういうところはコジョカルの役作りって上手いなーと思うんですけどね。それが王子が彼女の表情を覗き込んだ瞬間に全て吹き飛んでしまうところも。

ボネッリとのパ・ド・ドゥでも彼女の身体コントロールのすごさに驚きつつ、キラキラのパートナーシップを楽しみました。ボネッリは都さんの相手役として見た時より更に麗しい王子となっていました。都さん同様コジョカルも小柄だから、背の高いボネッリは上からすーっと彼女の視界に入るんだよね(上述の宮殿内を見回すシンデレラ、のところ)。それがすごくツボ。都さんと踊ったボネッリについて、当時の感想に「ノーブルというよりは少々カジュアルで若く、ある種の傲慢さを持った王子」と書いたのですが、"ある種の傲慢さ"が消えて、ノーブルの中に恋する若々しさと情熱を併せ持った非常に魅力的な王子になっていました。元々いい人キャラだと思うけど、それがこれだけ生きるキャラで見られるのは嬉しいわ。立ち姿も踊りも全てノーブルでお見事でした。

そういえば前回新国立で見た時は、最初に物乞いが出て来た時はずっと顔が見えないようにしていたと思うのだけど、今回は顔もけっこう見えてましたね。すごいメイクだったので誰かはわからなかったけど。暖炉の中にお鍋は昔からあったっけ?とか、確か舞踏会での義姉たちの登場は以前は2人同時で後からお父さんが一人で出て来たような気がしたけど、今回はアクリ姉が扇を広げて最初に登場し、後から妹とお父さんが手に手を取って登場になっていたなー、とか、細かいところで「変わった?」はいくつかあったような気がしました。私の記憶違いの可能性も高いわけですが。

仙女は湯川麻美子さん。湯川さんの仙女で好きなところは、最初に登場してシンデレラと向かい合ってパ・ド・ブーレで反対方向に動くところがありますよね。あそこで暖かい目線でシンデレラを見つめるところがとても好き。四季の精たちでは何と言っても西山裕子さんの春の精が素晴らしかったです。元々当たり役と思いますが、この日は完璧に音楽と一体化していました。アレグロにピタピタはまる彼女の踊りは本当に好き!夏は西川貴子さん。彼女の夏は砂漠質というか、アラブ系の感じがありました。湿度の低い灼熱の夏という感じですね。有里さんの秋は初めて見ましたが、彼女に合っていたと思います。冬は寺島ひろみさん。前回は夏を踊られていて、その時はとてもお似合いだった印象があったのですが、冬も素敵でした。彼女自身は冷たい冬の中に灯されたキャンドルというか、ぽっと暖かい存在感があるんですよね。あと、肩幅が狭くて華奢なのであの衣装の肩のあたりは少し直してあげた方がよかったんじゃないかなぁ。手を地面と水平にする特徴的なポーズの時に、そう思いました。

星の精たちも美しかったです。意外と少ないメンバー(12名?)で踊っていたのねーと思ったのですが、前からそうでしたっけ?久しぶりに大勢の中にいる川村真樹さんを見ましたが、やっぱり彼女は目を惹くわ〜。あとは丸尾さんと大和さんも目を惹きました。

この日はダンス教師とナポレオン役で吉本さんがソロに復帰!彼のダンス教師は仕事人で、相手が誰でも手を抜かないけど報酬も高いって感じ?芝居に手を抜かないので目が離せない人です。ナポレオンの戯けっぷりも最高でしたが、立っている時は無表情な位でもよかったかも。道化はバリノフくんから八幡さんに変更。八幡さん、少し踊りが重くなった?なんて思ったのですが、気のせいでしょうか。もちろん十分飛んで跳ねてくれていましたけど、前はもっと軽かったような。道化的な仕草はすっかり板についたので安心して見ていられます。

王子の友人たちは今回かなり揃ってました。特に目を惹いたのが中村誠さん。手や脚を上げた後の余韻がとっても好き。ノーブル度も一番高かった?彼の王子も見に行きたいのですが無理なのが非常に悔やまれます。ウェリントンは市川さん。彼のウェリントン、好きなんですよねー。(というか、もしかして私は市川さんのファンなんじゃ?と思ったりもするんですが)見られて嬉しかったです。そうそう!今回「おっ」と思ったのがマズルカのアンダーシュ・ハンマルさん。彼は見るたびに踊るところがどんどん前になってきますね。今回はかなり目立つところにいました。ズラ姿の日本人より圧倒的に衣装がお似合いで男前に見えましたよ!

という事で今回も本当に楽しんでいます。何度見ても、馬車が舞台を一周半するところと終幕はジーンと来るんです。できれば全公演通いたいくらいですが(笑)ぐっと我慢してあと3回(^^;)の予定です。楽しみ〜!