Side Ballet Eyecatch

「ドン・キホーテ」グルジア国立バレエ(2007/07/26)

2007年7月26日 東京文化会館

クレジット

音楽:レオン・ミンクス/振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー、ワフタング・チャブキアーニ/演出・振付改訂:アレクセイ・ファジェーチェフ、ニーナ・アナニアシヴィリ/ファジェーチェフ補佐:タチヤーナ・ラストルグーエワ、ユリアーナ・マルハシャンツ/衣裳・装置:ヴャチェスラフ・オクネフ/照明:アミラン・アナネリ/衣裳および装置製作:グルジア国立オペラ・バレエ劇場/装置協力:新国立劇場
指揮:ザーザ・カルマヘリーゼ/演奏:東京ニューシティ管弦楽団

キャスト

キトリ:ニーナ・アナニアシヴィリ
バジル(理髪師、キトリの恋人):アンドレイ・ウヴァーロフ
ドン・キホーテ:ギオルギ・タカシヴィリ
サンチョ・パンサ(ドン・キホーテの従者):ベサリオン・シャチリシヴィリ
ガマーシュ(裕福な貴族):エフゲニー・ゲラシメンコ
ロレンゾ(キトリの父):ユーリー・ソローキン
キトリの母:テオーナ・チャルクヴィアーニ
キトリの友人:ニーノ・マハシヴィリ、ラナ・ムゲブシヴィリ
ルチア(街の踊り子):ニーノ・オチアウーリ
エスパーダ(闘牛士):ワシル・アフメテリ
メルセデス(踊り子):マイヤ・イリュリーゼ
ボレロ:ヴェーラ・キカビーゼ、ダヴィド・ホザシヴィリ
ジプシーの男爵:アルチル・クヴィツィナーゼ
森の精の女王:ショレナ・ハインドラーワ
3人の森の精:アンナ・ムラデーリ、ニーノ・ゴグア、エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ
4人の森の精:テオーナ・アホバーゼ、ニーノ・マグラーゼ、ニーノ・サナーゼ、ツィシア・チョロカシヴィリ
キューピッド:マリアム・アレクシーゼ
酒場の主人:アルチル・クヴィツィナーゼ
カルメンシータ:マイア・アルパイーゼ
第1ヴァリエーション:ショレナ・ハインドラーワ
第2ヴァリエーション:ニーノ・ゴグア
子供たち:橘バレヱ学校(指導:沢田加代子、高田麻名)


感想

ものすごーく幸せで、心の底から楽しんだ公演でした。こんなに幸せで楽しい「ドン・キホーテ」は初めてだし、もうしばらくドンキは見なくてもいいかも、と思う位でした(とはいえ翌日のドンキも観たんですけど)。

プロローグにいかにもロシア的(ってロシアではないのですが)な影絵でドン・キホーテとサンチョ・パンサの旅の風景を映すのもよいものだなーと思いました。もちろんそこには様々が理由があるのでしょうが、これは成功してると思います。キホーテの乗った馬はゆったりゆったり歩き、サンチョパンサのロバ?はチョコチョコ歩く、ただそれだけなのに何だか甘酸っぱい気持ちになったんですよねぇ。

グルジアの「ドンキ」はファジェーチェフとニーナの改訂版。新国立劇場もファジェーチェフ版なので振付は共通するものが多々ありました。例えば1幕の村人たちの踊りとか2幕のジプシーたちの踊りなんかは新国立と同じなのですが、見た感じは全然違う。私はどちらも好きですが(グルジアを見てても新国のダンサーたちの踊りも懐かしくなる)、グルジアの方が好きって人がいるのはよくわかります。新国のダンサーもみな楽しそうだし音楽にピタっと合わせて揃っているのを観るのも幸福なんですが、グルジアのダンサーたちはとにかくプロポーションがいいし、勢いがあるんですよね。

グルジアの2幕は"ジプシーの野営地(キトリたちは出てこない)→夢の場→居酒屋(ギターの踊り省略)"というストーリー的に破綻のないもので、その点はよかったですね。野営地に主役2人が出てこないのは少し淋しいけど、時間的にそう長くはないので間延びする程ではなかったです。エスパーダ一味の闘牛士達は人数が少なめで舞台に突き刺さる刀の向きが逆だったとか、3幕で祝典のために入場してくる人が少ない分を子役さんたちの会場セッティング(テーブルクロスをかけるなど)に充てるなど少々淋しい部分もありましたが、ほとんど気になりませんでした。それを補って余りある楽しさの方が多いのでしょうね。

主役の2人についてですが、まずニーナが可愛い!彼女のキトリはまるで呼吸をするように自然。演技も振付も越えて本人と役柄が一体化している気がしました。当たり役というのはこういう事なんですねぇ...。ドルシネアもとてもよかったし、「白鳥」で見た時よりぐっと調子も上がっているようでした。舞台から陽性のオーラがビシバシ飛んできましたよ。フェッテの速さや回転の軸のぶれなさ加減は本当にお見事。グラン・パ・ド・ドゥの32回転は確か3回に1回位腕を上げて回る華やかなものでした。技術的には前回見た時の方が盤石だったと思うけど、そんなことはどうでもいいと思えるだけの押しと華やかさ、そしてエンターテイメント性がありました。

そして、ウヴァーロフ。とにかくテンションが高い!そして嬉しそう、幸せそう。つい先日NHK教育デジタル3でザハロワと新国立にゲスト出演した「ドンキ」を見直したばかりだったので、余計にウヴァーロフの浮き浮き具合が手に取るように判ります。ザハロワと踊った時のウヴァーロフも楽しそうだと思ったけど(私が見たのは録画撮りの前日)、この日の彼はその比じゃない。表情が豊かでいちいち伝わってくる。ダンサーのパートナーへの親愛の気持ちってこんなにも表に出るものなんだ、と驚きました。ダンサーの「楽しい!」の気持ちが、こんなにも観客に遺伝するものなんだって。

怪我も順調に回復したってことなんでしょうね、踊りも見事だったしサポートも盤石。大きなウヴァーロフと一緒にいると更に小さく見えるニーナ、その大きなウヴァーロフが大切に大切にニーナをサポートしているのがまた暖かいの。片手リフトの2回目なんて、ウヴァーロフったらしばし静止のあとトコトコって歩いて来ちゃったもんね。客席大喜び。居酒屋の場面でのニーナの頭が下に付きそうな勢いのダイビングも、ウヴァーロフが両手を広げてがっしり受け止めていて、そりゃあ堪能しました。ウヴァーロフの狂言自殺の寝転び方とかは新国で見たときと一緒だったのですが(彼はナイフを床に捨てちゃうんだよね)、キトリが彼の手を胸にあてた時におっぱいの方に"のそっ"と動くでかい手に笑いました。確かザハロワん時はやってなかったでしょ?(笑)

ウヴァーロフとニーナの身長差を考えると彼らの踊りのシンクロ具合は驚異的。もちろんウヴァがニーナの踊りに吸い付くように(笑)あわせているのだけど、別に小さくまとめている訳でもないしそれだけニーナの踊りが大きいって事なのでしょうね。私はニーナとファジェーチェフのペア全盛期を生では見ていないのですが、映像で見た彼らのシンクロ具合を思うと、もうニーナとこれだけぴったり合う人は出てこないんじゃないかととても残念に思っていたのですよね。でも、ウヴァーロフがいた。ウヴァーロフのニーナ大好き光線は、今回ちょっと衝撃的ですらありました(笑)。その大好き光線は久しぶりの来日を待ちわびていた日本のファンのそれともシンクロしていた訳で、今回のパートナーがウヴァだった事が、更に公演を盛り上げたような気がしてなりません。そういう意味で、ウヴァーロフには感謝してもしきれないし、ますます大好きになってしまいました。ありがとう、ウヴァ♪観客に遺伝するくらいの彼の「楽しい!」気持ちが舞台にいる他のダンサーに遺伝しない訳がない、ということで、他のダンサーたちもすっかりノリノリ。相乗効果で本当にいい公演になっていたと思います。

脇を固めるキャラクターたちもかなり秀逸。キホーテ役のギオルギ・タカシヴィリはずいぶん若いダンサーだったようで、深い造詣を求められるこの役としては合格点という訳にはいかなかったけれど、かなり身体能力が高いと思われるサンチョ役のベサリオン・シャチリシヴィリ(布なしでダンサーたちに空中に放り投げられていたのにはびっくり!あと1幕のエンディングに街の女の子を抱えてグルグル回っているのが妙にツボ)がその分を補っていました。ガマーシュ(エフゲニー・ゲラシメンコ)ももう少しはじけてもよいと思うけどね。

この日のエスパーダはワシル・アフメテリ。「白鳥」ではスパニッシュ一味の一人だったようです。彼はかなり男臭いエスパーダ。マントの扱いなんかはもっと上手い人がいると思いますが、あの居酒屋でのヴァリエーションはよかったなー。彼の男臭さ(というか濃ゆさ)とヴァリがピシっと合ってて心地よかったです。ルチア(街の踊り子)とメルセデスも「白鳥」スパニッシュ一味の女性。特にメルセデス役のイリュイーゼはもうすっかりファンになってしまいました。背中が柔らかくて見せ場を心得たメルセデスは他にもいるけど、彼女のメルセデスは隅々まで計算された動きが美しいの。スカートの裾を蹴り上げてつまむ動作の無駄のない美しさったら比類がない。そしてフラメンコダンサーに通じる腕の能弁さ、手首の返しの美しさ。もうずーっと見ていたい位でした。

ボレロの男性もちょっと気になる踊りっぷりで、終演後に確認してみたら、弟ホザシヴィリのダヴィッドくんでした。むむ、ここの兄弟は注目ですね。翌日のエスパーダは彼だというので、俄然楽しみにもなってきたのでした。

カーテンコールも大盛り上がり。まず最初の全体でのご挨拶の時は、ウヴァーロフと手をつないで舞台の後方からぶわーっと走って来て跳躍!してくれたでしょう?ウヴァーロフは"白鳥"の時も跪いて花束をニーナに捧げたのですが、この日はそれが更に芝居がかっていて(笑)素敵だったー。拍手にこたえる為に前に出てくる時も何度も後ろをふり返ってダンサーたちを前に出したり、ニーナはホントに素敵です。カーテンの向こうから出てくる時も、形の違うリフトでウヴァがニーナを持ち上げて出てきてくれたので友人と顔を見合わせて笑ってしまいました。もうこうなると「次は何?」って感じで客は帰りません(笑)。そしたらナント!エレーナちゃん(チュチュ着てた〜)を連れて3人で出てきてくれました。かわいかったー。もう、ニーナったら何ていい人なんだ!

会場を出る全ての人が笑顔で帰れる幸福感に溢れた公演、本当にその場にいられてよかったです。ニーナ、またすぐに!バレエ団をひきいて来日して下さいね。お待ちしています!

2007.7.31追記
思い出した!ニーナの3幕グラン・パ・ド・ドゥのヴァリの時、ハープがめちゃくちゃコケてました。あれはないよなぁ。いろんなドンキを見ましたが「指が追い付かなくて引けてないハープ」は初めてでした。ドンキを演奏しにきて、あそこが弾けないハーピストはいけません。ボリショイ管弦楽団のハーピストさん位美しい音色で歌えとまではいわないからさぁ...

Comments [4]

No.1

ゆうさん、はじめまして。こんな夜更けにすみません。
この感想を読んで、先週の幸せだった夜を思い出して、
また幸せな気分になりました。
私のブログでご紹介させて頂いて構いませんか?
私はバレエには詳しくなくて(好きな公演をたまに観るだけ)
今回のも全く感想になってないというか、
ただよかった!それしか書いてなくて、意味不明で。^^;
他の人にもゆうさんの感想を読んでもらえたらと思って。
読んでいるとあの日の舞台が蘇ってきました。
ありがとうございました。^^

No.2

かのんさま、コメントありがとうございました。
長文でよみにくい、グダグダの感想をお読みいただいて恐縮しています〜。リンク等の制限は設けておりませんので、ご紹介頂ける事はとても嬉しいです。ありがとうございます。

かのんさんの感想も拝見しましたよ。楽しかった気持ちがストレートに伝わってきて素敵でした。旅行の記事も楽しそうなので、おりをみてゆっくり拝見させていただきたいと思っています♪

No.3

ゆうさん、こんばんは。ご紹介させて頂きました。
私の感想も読んでくださったなんて、お恥かしい〜!ありがとうございます。^^

No.4

かのんさま、どうもありがとうございました。
すごい特等席にリンク入れていただいて、ドキドキです(笑)。

ご覧の皆様へ。
かのんさんの感想はこちらです。
http://blog.so-net.ne.jp/kanon_blue_sky/2007-07-28-1

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プロフィール

ゆう:ただいま劇場通いはお休み中。その間もバレエから離れられずブログ更新していましたが、そちらも現在は滞りがち。どちらも元に戻れるかどうか自分でも心配…。

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2016年2月にスマートフォン・タブレットでも見やすいデザインに変更しました。過去記事も順次対応させて参りますが、しばらくの間お見苦しいところが多々あると思います。お許し下さい。

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