2007年8月2日 東京文化会館 大ホール

第1部

「海賊」

振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリーゴ
パロマ・ヘレーラ/ホセ・カレーニョ

客席を暖めるのにぴったりのオープニング。エレガントなカレーニョのアリを堪能しました。いつもより色気の発散は少なめだったかしら。パロマも丁寧さが印象に残る踊りでした。ホセのカーテンコールの最後のポージングは今回も健在。

「ロミオとジュリエット」バルコニーのパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

心配していたバルコニーはちゃんとありました。やっぱりコレがないとね。そしておなじみの曲が流れ、フェリが出て来た瞬間に泣きそうに。少女らしい佇まいも背中の曲線も全く以前と変わらないのに、これが見納めなんて...瑞々しい少女らしさ、恋愛初期の甘酸っぱいドキドキ感、これがパ・ド・ドゥの抜粋だという事を忘れて一緒に高揚してしまいました。

そして今回パートナーがボッレだった事が、このパ・ド・ドゥに最高の結果をもたらしていたと思います。若く美しく情熱的で、かつジュリエットを壊れ物のように大切に扱うロミオ。恋する少女にとっての理想の男の子を絵に描いたようなボッレのロミオ。1点の曇りもなく、ほんの小さな不安や落胆さえも観客に与えることなく、サポートも彼自身の美しい踊りも完璧でした。
2人の全幕を日本で見られなかった事は本当に残念ですが、素晴らしいパフォーマンスでした。

「マーラー交響曲第3番 愛が私に語るもの」

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:グスタフ・マーラー
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

たぶん、2003年の世界バレエフェス・ガラで見たのと同じだと思うのですが、恐ろしい事に全く前回の断片が出てこなかった(つまり、綺麗さっぱり忘れていたらしい)。こんなに美しいパ・ド・ドゥを見ておきながら綺麗さっぱり忘れているなんて、もったいないことです。前回見た時の感想もたいした事は書いていないのですが、やっぱり前回同様「難しいリフト満載だなー」と思いながら見ていました←結局進歩もないらしい。1つ1つの形が本当に美しくて音楽的で、彼らの世界にどっぷり浸って楽しみました。


「白鳥の湖」第2幕よりパ・ド・ドゥ

振付:レフ・イワノフ、マリウス・プティパ/音楽:P.I.チャイコフスキー
ジュリー・ケント/マルセロ・ゴメス

マルセロの衣装はABT版のものではなかったですね。自前のガラ用?2幕の例のグラン・アダージオの上演ですが、オデットの出を取り入れたりしたので若干バタついた印象。美男美女の組み合わせでとてもスイートなんだけど、踊りとしてはあまりしっくり来てなかったみたい。それでもマルセロはノーブルで素敵だったし、ジュリーも細かい脚さばきが美しかったです。

「ヘルマン・シュメルマン」

振付:ウィリアム・フォーサイス/音楽:トム・ウィレムス
アリシア・アマトリアン/ロバート・テューズリー

生でパ・ド・ドゥ全体を観るのは初めて。アマトリアンはコンテ、すごくいいですねー。2003年のバレエフェスで"イン・ザ・ミドル"を見た時より、ずっとこちらの方がよいと思いました。驚異的な身体能力。テューズリーとはまだピッタリという訳にはいかないのかなーという感じで見ていたのですが、黄色いスカートを付けて出て来てから空気が変わった感じ。だからもしかしたら、元々そういう作品なのかもしれない...。でも、たぶん初日より2日目の方がよくなるだろうな、という気はする。

「エクセルシオール」

振付:ウーゴ・デッラーラ/音楽:ロムアルド・マレンコ
モニカ・ペレーゴ/ロベルト・ボッレ

これも2003年のバレエフェス以来。モニカ・ペレーゴはこの作品の為に2日間だけ参加してくれたんですよね。まぁ何しろボッレが美しい。あまりに神々しいので奴隷に見えないんですが(笑)眼福でしたー。そして、文明役のペレーゴをとびっきりの笑顔でサポート。モニカ・ペレーゴはKバレエ「白鳥」DVDで見た時に恐ろしく脚の強い回転系のダンサーという認識でいましたが、やっぱり回転は強いですね。テープ演奏なのでフェッテは音楽に合わせるのが大変そうにも見えましたが、身体のコントロール力が抜群。背中を向けて頭からボッレに向って飛び込んでいくところもいかにも簡単そうにヒョイっと飛ぶのにぶっ飛びました。

「オセロ」

振付:ラー・ルボヴィッチ/音楽:エリオット・ゴールデンサル
アレッサンドラ・フェリ/マルセロ・ゴメス

この作品が日本で見られるとは思っていなかったので、演目発表の時からものすごく楽しみにしていました。場面はオセロがデスデモーナに手をかけるまでの苦悩の場面。フェリのデズデモーナはピュアで美しく、美しい脚が愛するオセロに理解してもらえない苦悩を表しているかのよう。そして美しいデズデモーナの愛情を信じられずに苦悩するマルセロのオセロが何とも哀しい。ドラマティックで素晴らしいパ・ド・ドゥでした。カーテンコールで、感極まってフェリの手に口づけするマルセロの表情にまた涙。

第2部

「ジゼル」第2幕よりパ・ド・ドゥ(アダージョのみ)

振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー/音楽:アドルフ・アダン
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

もう踊らないと公言していたジゼル、その2幕のアダージオだけを特別に踊ってくれたフェリ。ボッレにリフトされて空間を彷徨うところは正に精霊。全く体重を感じさせない完璧さ。ここでもまたボッレの素晴らしさに感嘆そして感謝しつつフェリの最後のジゼルを味わいつくしました。なんと儚く暖かい魂の交流だったでしょう。

「太陽が降り注ぐ雪のように」

振付:ローランド・ダレシオ/音楽:ペーター・シンドラー
アリシア・アマトリアン/ロバート・テューズリー

これも2003年バレエフェス以来。久しぶりだったので楽しみにしていたのですが、初見の時ほど楽しさがなかったなー。意外性で見せる作品なのかしら...。アマトリアンとフォーゲルくんで見たときは2人の掛け合いが拮抗して緊張感があったような気がするんだけど、今回のはちょっとぬるく見えちゃったのね。これも2日目の方がよさそうだなぁ。あ、でもあまり覚えていなかった細かいところまでユニークで、楽しかったです。アマトリアンって、こういう掛け合いのある作品がよく似合うね。

シュツットガルトは若い振付家に機会を与える事でも有名ですが、そうやって作られた作品がコンサートピースとして世界で見られるのも素晴らしい事ですね。

「シンデレラ」より舞踏会のパ・ド・ドゥ

振付:ジェームス・クデルカ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ジュリー・ケント/マルセロ・ゴメス

これも楽しみにしていました。ジュリーはオデットよりこちらの方がずっとお似合い。マダム・シンデレラに見えないこともないけれど、王子が魅了されてしまうのも納得のキラキラ感でした。マルセロの王子姿はもう反則です。格好良すぎ。で、シンデレラを手を取ろうとして取れない、というシークエンスが何とも切なくて素敵。

「ハムレット」

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:マイケル・ティペット
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

始まった瞬間、あれ?これ何のパ・ド・ドゥだっけ?と頭の中が?だらけに。舞台が現代に置き換えられているので何の話かはわからないままに、2人の紡ぐ物語の世界にすっかり入り込んでしまいました。ワンピース姿のアッツォーニが可愛くて、人形や花冠で無邪気に遊ぶ姿にクラクラ。コートと帽子を抱えて飛び出してきたリアブコも可愛い。シャツの裾が片方はみ出しているのは、狂気を装ったハムレットを表していたのかしら。旅立ちと別れに際しての恋人たちの感情が手に取るようにわかって、改めて2人の演技力に感心しました。全幕で見たい見たい〜。一晩にアブストラクトとストーリーものと両方見せてくれるバランス感覚も好感度高し。

「フー・ケアーズ?」

振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョージ・ガーシュウィン
パロマ・ヘレーラ/ホセ・カレーニョ

考えてみたら、私はカレーニョがガラでプティパもの以外の作品を踊るのを見たのはこれが初めて。私が見てないだけで、既にこの作品は日本で踊っているそうですが、何だかとても新鮮でした。私のこの作品へのイメージってシルクサテンなのですが、この2人はシルクリネンというかコットンシルクというか...あのね、夜のNYではあるにしろ、昼間の太陽の気配がわずかに残る感じ?何を訳のわからない事を言ってるんだって感じ、ですよね(笑)。

「マノン」より 第3幕"沼地のパ・ド・ドゥ"

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

洒脱なNYからルイジアナの沼地へひとっ飛び。幕があくとスモークが一杯にたかれていました。もう全然冷静に見ていられなかったです。途中から号泣。なので感想も何もあったものじゃないのですが、フェリの踊りはしっかり脳裏に焼き付けました。

「マノン」のカーテンコールのあと、ヨハン・シュトラウスの音楽(こうもり)でフィナーレ。あの、よくライブなんかである、客席にゴールドのテープを降らすヤツ、あれが金/銀と2回出て来て、おもわず「うわっ」と焦ってしまいました。バレエでは珍しいよねぇ。その観客席の様子にきょとんとしてたダンサーたち、今度はステージ上に紙テープと紙吹雪。花束は全員に。フェリのは特大花束。何度かのカーテンコールの後もう1度幕があくと、フェリだけがスポットライトを浴びて立っていて、ハラハラと真紅のバラの花びらっぽいものが降っていたのはとても素敵な演出でした。それぞれのダンサーが非常な集中力でフェリのフィナーレをもり立てていた事に感謝です。

チケット代の高さの割にテープ演奏だったのがとても残念ですが、このラインナップを観ると上演権の高そうな作品ばかりで、致し方ないのかなと思えました。フェリのファイナルパフォーマンスでもなければ興行として成り立たなかったかもしれませんけど。入場待ちの客が会場前から長い列を作って待っているのに(あそこまでの行列は文化会館では初めて見たような)開場まで待たされたりと運営面で多少不慣れさが目についたのですが、舞台スタッフはプロフェッショナルでとても満足のいくものでした。もう1回、あとはBプロでフェリの姿を目に焼き付けます。