2007年8月6日 東京文化会館 大ホール

第1部

「シンデレラ物語」

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

オレンジをもてあそびながらやっと出会えた理想の女性を想いうっとりする王子がそこにいる。幕があいてリアブコの様子を見た途端にそれがわかることに感嘆。夢見るように踊るリアブコ。白いふわっふわのシフォンを重ねたドレス姿のアッツォーニが入ってくるのだけど、すんなりとは愛のパ・ド・ドゥにならなくて、シンデレラは恋する気持ちより相手の身分の高さに戸惑う気持ちが強い。だから、ちょっとずつのふれあいはあるものの、しばらくは2人が交互に踊るだけ。いよいよ2人のパ・ド・ドゥ!という段になってリアブコがシャツを腕まくりしながら出てきたのがかわいかった。あとは、幸せな2人の愛の世界。美しかったです。いつか、全幕で見られるといいな。

今回のガラで改めて実感したけど、この夫婦の表現力と踊りの美しさは本当に比類がない。手を差し出しただけで、顔をちょっと傾けただけで、彼ら(役柄)の気持ちがストンと伝わる。

「カルメン」

振付:ローラン・プティ/音楽:ジョルジュ・ビゼー
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

最初はボッレのヴァリエーションから。ボッレの優しい気持ちがにじみ出るホセで、カルメンに翻弄されながらも彼女を暖かく包んであげるような雰囲気が印象的でした。そしてフェリのカルメン。上手側から脚からすっと登場する様子、ポワントの甲側を床に打ち付ける独特の仕草、たぶん一生忘れられないと思う。

「アポロ」

振付:ジョージ・バランシン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
パロマ・ヘレーラ/ホセ・カレーニョ

パロマのテルプシコーレ、私はけっこう好きでした。体格的に恵まれたダンサーが踊るほうが見栄えはすると思うけど、すごく新鮮なテルプシコーレでした。カレーニョは本当に素敵なダンサーで大好きなので、アポロも楽しみでした。ん?でも、オーラ抑え気味だったかなぁ。それか私の期待値が高すぎたかも。イーサンで見たいなぁ、と思ってしまいあまり集中できず。ごめんね、カレーニョ。


「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」

振付:ウィリアム・フォーサイス/音楽:トム・ウィレムス
アリシア・アマトリアン/ロバート・テューズリー

ここで急に音がでかくなりませんでした?ストラヴィンスキーで眠ってた周囲の非バレエファンが一斉に飛び起きましたよ。しかしその音量に負けないエネルギッシュな踊り。テューズリー、髪を後ろにぴったり撫で付けて出て来たので一瞬誰だかわからなかったよ。Aプロの2演目よりパートナーシップが進化していて、グイグイ引き込まれました。アマトリアンも2003年に見た時よりずっとずっとすごい!客席大喝采でした。

「メドウ」

振付:ラー・ルボヴィッチ/音楽:ギャビン・ブライヤーズ(Incipit Vita Novaここに新しい人生が始まる)
ジュリー・ケント/マルセロ・ゴメス

この作品、まさか日本でこんなに早く見られるとは思っていなかったのですごく楽しみにしていました。ライトに浮かび上がる2人。ああ、私はジュリーはコンテの方が好きだなーと実感しました。この人の透明感とか美しいラインとか現代的な要素などの美点が生かされていて素敵でした。ゴメスはリフト担みたいになっていたけど、このゆったりした振付の中でブレなく女性ダンサーを美しく見せるのはABTのプリンシパルでもゴメスが一番じゃないかしら。美しい作品でした。

「マノン」第1幕より"寝室のパ・ド・ドゥ"

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

無邪気に、そして情熱的に愛し合う2人。ただ目の前の愛と快楽だけを刹那的に求める男女が、そこにいました。ホントに幸せそうに笑顔で踊ってる。振付とか、超越しちゃってました。もちろん、きちんと踊って不安がないからこその超越。

第2部

「ロミオとジュリエット」より第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:アメデオ・アモディオ/音楽:エクトル・ベルリオーズ
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

一体どんなだろーと心配してたんです、実は。でもすごくよかった。とても丁寧にジュリエットとロメオの心情が描かれていました。ベルリオーズなのでマクミランと比べる事がないのも良いし。今回は事前にほとんど演目紹介を見なかったのでこの場面がどんなシーンかは知らなかったのですが、フェリの様子を見ているだけで、ティボルトがロミオに殺されたと知って苦悩するジュリエットだとわかる。

部屋に走り込んでくるロミオがおそるおそるジュリエットに近づいても、拒絶してしまうジュリエット。それでもロミオを求めてしまうのだけど、やはり心の痛みはとれない。それが踊っているうちに2人は自分たちだけの世界に入り込み幸せそうな笑顔になる。夜明け、別れの時...

今回2種類のロミオ/ジュリエットを見せてくれた2人は、天性のロミオで天性のジュリエットでした。当たり役と言われる役を次々披露してくれたフェリだけど、私は彼女のジュリエットが一番好き。それを改めて感じました。

「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
パロマ・ヘレーラ/ホセ・カレーニョ

そんなロミジュリの感動が漂う中をミンクスのお祭り音楽が。入り込めないかと思ったけど、2人とも見事に盛り上げてくれました。パロマ、エレガントなキトリだったなー。長ーいバランスを見せてくれたりもしましたが、カレーニョのノーブルなバジルにふさわしい素敵なキトリでした。今回のガラ、パロマの株は私の中でずいぶん上昇しましたよ。早くまた全幕が見たいなーと待ち遠しいです。カレーニョはいつも通りお見事。

「マーキュリアス・マニューヴァース」

振付:クリストファー・ウィールドン/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

グレーの上下のリアブコと、同じ色に胸にグルリと1周えんじ?のラインが入ったスカートつきレオタードのアッツォーニ。今までいくつか見たウィールダンの作品の中では圧倒的に好きなタイプの作品。もしかしたらこの2人が踊っているからかもしれない。2人はいつもどんな作品にも物語を作って間口を広げて観客に手を差し伸べてくれるから。美しかったです。

「ル・グラン・パ・ド・ドゥ」

振付:クリスティアン・シュプック/音楽:ジョアキーノ・ロッシーニ
アリシア・アマトリアン/ロバート・テューズリー

テューズリー!最高でした。私、今までに見たテューズリーの舞台の中でこれが一番好きだわ。さすが初演キャストだけあってのびのびと自由でした。アマトリアンも「21世紀のエトワールたち(テレビ放映分)」で見た時より自在。コメディエンヌ振りに磨きが掛かっていて楽しかったわ〜。テューズリーがチュチュ牛に「一緒に踊ろう」とやるところに大爆笑。この作品、あらゆるクラシックバレエのモチーフがちりばめられているので、それを踊りこなすだけの技量も必要だし、しっかりコメディしてくれないと半端な事では笑いにくい。でもそういうのひっくるめて全部お見事でした。客席大受け。

「真夏の夜の夢(ザ・ドリーム)」

振付:フレデリック・アシュトン/音楽:フェリックス・メンデルスゾーン
ジュリー・ケント/マルセロ・ゴメス

ゴメスのオーベロンは男性っぽさがむんむんしててセクシー。素敵だったのよ、とっても。そして、ジュリーのタイターニアが殺人的にかわいかった。見た目タイターニアそのもの。ジュリーに一番似合う役じゃないだろーか。ジュリーはコンテがいい、なんて前言をすっかり忘れてしまう程。彼女のタイターニアがロバと踊るところを見てみたいなぁ。意外に、といっては失礼ですが2人ともアシュトン良かったです。楽しみました。

「椿姫」第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
アレッサンドラ・フェリ/ロベルト・ボッレ

ああ、この時がきてしまいました。日本でのフェリのファイナルパフォーマンス。途中から涙が止まらなくなって、冷静には見ていられませんでした。

ボッレは幕の手前でラグの上に座っていました。苦悩するボッレも麗しい。そして静かに幕があがって、黒い衣装に身を包んだフェリが登場。若く美しいボッレは、たぶんデ・グリューよりずっと優しくて、そこには常にフェリへの思いやりがありました。フェリのドレスを脱がせる様子もひたすら優しい。でも、フェリの全身が愛と切なさを叫んでいるのに呼応して、本当に情熱的なデ・グリューでした。フェリからの最後のプレゼント、なんて素晴らしい贈り物を下さったのでしょう。ありがとう、フェリ。

カーテンコールでは、今日は全員に真紅のバラの花束。スポットライトを浴びたフェリに真紅のバラの花びらがひらひら、というのは今日もありました。最後だからか、量も多かった。その花びらを浴びながら観客の拍手に応えるフェリのところに、先ほどの花束をもったダンサーたちが両脇から登場して、フェリの足下にその花束を捧げました。一人一人とハグするフェリ。抱き合った相手の背中をぽんぽんと叩きながら話したり、頭を抱きしめるようにしたり。それを見てるだけで泣けてくるのよ。カーテンの前に出て来た時のジュリーが私たち観客と同じように泣きすぎて脱力したような感じで、それをゴメスが慰めていたのもかわいかった。

いつまでも続く観客の拍手に何度も応えてくれたフェリ。本当に本当に、素敵なパフォーマンスをありがとう。どうかこれからは素敵なご主人と可愛い娘さん2人と幸せに生きて下さい。でも、できればたまには、あなたの貴重な財産であるバレエを後輩達に伝えるお仕事をして下さったら嬉しいな。