2007年8月16日 ゆうぽうと 簡易保険ホール

クレジット

振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、アレクサンドル・ゴールスキー、イーゴリ・スミルノフ/音楽:ピョートル・I. チャイコフスキー/美術衣装:ニコラ・ベノワ
指揮:アレクサンドル・ソトニコフ/演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

キャスト

【第1幕】
ジークフリート王子:オドリック・ベザール
王妃:加茂律子
道化:マチアス・エイマン
家庭教師:野辺誠治
パ・ド・トロワ:マチルド・フルステー、シャルリーヌ・ジザンダネ、アクセル・イボ
ワルツ(ソリスト):西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子、前川美智子
【第2幕/第4幕】
オデット:ミリアム・ウルド=ブラーム
ジークフリート王子:マニュエル・ルグリ
悪魔ロットバルト:ステファン・ビュヨン
四羽の白鳥:佐伯知香、森志織、福田ゆかり、阪井麻美
三羽の白鳥:西村真由美、高木綾、奈良春夏
【第3幕】
オディール:ドロテ・ジルベール
ジークフリート王子:マチュー・ガニオ
悪魔ロットバルト:ステファン・ビュヨン
王妃:加茂律子
道化:マチアス・エイマン
司会者:野辺誠治
チャルダッシュ(第1ソリスト):長谷川智佳子、大嶋正樹
チャルダッシュ(第2ソリスト):森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト):高村順子、マチアス・エイマン
マズルカ(ソリスト):田中結子、坂井直子、中島周、横内国弘
花嫁候補たち:小出領子、西村真由美、乾友子、佐伯知香、高木綾、吉川留衣
スペイン:井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲


感想

主役が幕ごとに変わるガラ形式の全幕を見たのは初めてだったのですが、お祭りとしては最高ですね。でもって、ダンサーの持っているものがはっきり出る。出てくる王子が変わるたびにリフレッシュされるので、非常に新鮮でした。その分ストーリーもへったくれもないって感じですが、十分楽しかったです。

では順番に思い出しながら。
1幕。すぐに登場したマチアス・エイマンの道化に釘付け!衣装は東バのものなんだけど、シルエットがやっぱり全然違う〜。そしてバネと身体の柔らかさを見せつけながら美しく踊る。超絶技巧でも安定してサラっと踊れてしまうので音から外れないし、全く嫌みにならない。しかもキャラクターが素晴らしい。ちょっとオネエっぽい仕草も可愛く微笑ましいし、「白鳥の湖」の道化として王子や周囲の人々を盛り上げるだけでなく、舞台そのもの、会場までも盛り上げてくれました。彼の道化を見られただけで、私としては行った甲斐があったと思います。1幕は事実上彼が主役だったし。東バ版の道化としてもホントにきちんと役割を果たしていて、ゲストの鑑だと思ったわ。

ソロの終盤、超高速ピルエットで止まりきれずにフィニッシュが崩れてしまったけれど、それをすかさず建て直して白鳥ポーズで戯けてみせてもくれました。例えそれがなかったとしても、観客は十分喜んで喝采したと思うけど、彼のあのリカバリーは立派。あのポーズは確か大嶋正樹さんでも見た事がある気がするけど、とっさに取れるポーズではないよねぇ。1幕最後の方に舞台後方で後ろ向きに見せてくれた白鳥の羽ばたきポーズも美しかったな〜。あとね、指が長いのではないかと思うけど、指の表情1つとっても見栄えがするし豊かな表現力があって効果的に感じました。

パ・ド・トロワの3人もとてもよかったです。えっと、イボくんのサポートはまだまだだと思いますが、あの柔らかい踊りは今後どう成長していくのか見て行きたいなぁと思わせる。フルステーのニュアンスのある踊りもよかったけど、ジザンダネの1つ1つ丁寧に踊っていく姿もとても好感を持ちました。華奢な3人だから東バの衣装もめちゃくちゃ似合うし「王子の友人」らしい気品があったと思います。さわやかーなパ・ド・トロワでした。

ワルツのソリストさんたちは、まだ何人かとっさに名前が出てこない人が半分くらい...最近ご無沙汰しててゴメンなさい。でもこの辺りのダンサーさんたちも順調に育ってきてるのだなーと思いました。

さて、1幕の王子はオドリック・ベザール。1幕の王子ってこんなに印象薄い役だっけ?というくらい私がエイマンくんばかり見てしまったので、1幕最後のソロまであまり彼のことに注目できず。妙に落ち着いた佇まいであまり王子っぽさが出せてなかったような印象があるのだけど、表情が固かったせいかな。最後のソロはがんばって丁寧に踊ってましたが...まだ振りをなぞっただけという印象。それと、王子衣装だとやっぱり首が前に出てるのが気になります。もったいないなー、せっかくあの手脚の長い長身男子なのに。まぁ、ちょっと損な役回りではあるよね、あとから出てくる王子は2人ともエトワールだし、1幕は道化の見せ場がたっぷりだし。1幕最後のカーテンコールで拍手にニカっと笑った嬉しそうな笑顔を見ると、憎めないなーって思うんだけど。

第2幕。
走り出てきたルグリ。もう全然違う。出て来た瞬間にその役の背負っている背景まで一瞬のうちに見せてくれる、これこそがあるべき姿。でもってルグリはそれを本当にくっきりと鮮やかに描いてみせてくれる。登場の時は本当に若々しくて、年齢はベザールくんよりずっと上だけど、むしろ「ジークフリートが若返ったぞ」と見えてしまったのにびっくり。オデットへの愛と尊敬に溢れたジークフリートでした。2幕と4幕だけだと踊るところが少ないのが残念でした。

ミリアムの白鳥は、このガラで一番楽しみにしていました。最初の印象は「気の強ぇえ白鳥だなー」。むしろオディールの方が凄みがあって向いているかもと思いました。あのオデットが自分の境遇を打ち明けるマイムのせいかもしれません。あのマイム、私とっても好きではあるんだけど、「でも、出会ったばかりの相手にそんな勢いで自分の境遇をまくしたてなくてもー」とも毎回思うんですよね。ミリアムのオデットは王子に触れられる事への拒否が(恐怖心というより)プライドの高さからというふうにも見えたし、王子に心を許すまでの強い視線が、他の白鳥たちを守る為に備えなければならなかった強さ、とも受け取れる。気高いオデット。

私は基本的に、白鳥は四肢の長い長身の(できればロシア系)ダンサーが好みですが、ミリアムはそう背が高くにもかかわらず、ラインが綺麗なのと伝わってくるものがたくさんあって心に残りました。映像で見たルテステュのオデットより好き。ただ、ルグリとミリアムの踊りの質が同じではないせいか、この2幕は心震えるという程ではなかったけれど。それもお祭りならではの組み合わせですよね。

ロットバルト役のビュヨンくんは東バ仕様の衣装(たぶん)で登場。マスクを被っているのでお顔は顎あたりしか見えないのですが、それでも綺麗なお顔だと思ってしまう。アクの強いロットバルトではないけれど、過不足なく踊って長身で舞台映えするってだけで嬉しくなるのは、一体なぜ?(笑)。

第3幕。
ディヴェルティスマンでは、ナポリが可愛かったなー。エイマンくんと高村順子さんのやり取りが可愛くて目尻が下がっちゃった。マズルカはほとんど中島さんしか見てませんでした(笑)。精悍なマズルカ戦士(って感じだったわ)にクラっ。そしてやっぱり腕から指先の美しさは絶品。マズルカの女性ソリストのうち、お名前がわからないのですが最初にソロを踊った方がいい感じでした。それと、花嫁候補たち。いやー眼福でした。べっぴんさんばかり6人、しかも小出領子さん、西村真由美さんという東バの私好みツートップがいて嬉しくなりました。踊り、安定してましたよね。

あ、そうそう彼女たちが踊る前にマチュー王子が登場。出てくるまで幕毎に変わるってことが頭から抜け落ちていて、マチューが出て来た時に「そうだった!」と。華があるなー。本人の資質であると思われる素直さが王子の鷹揚に繋がって、そのままで王子。踊りも丁寧にのびのびと。私は前回のルグリ・ガラ以来の、今回の一連のマチューなんだけど、失礼ながら本当に上手くなったなぁと。ところどころ現代っ子の(素に戻る、とも言う)顔が覗くのが王子になりきれない感じではあるのですが、素材が王子だから今のところは許せる。そしていかにもお坊ちゃんなので、容易くオディールに騙されちゃうのも納得。えらそーですが、また精進して素敵な王子になって日本で踊ってね。

最後のファンファーレが鳴って、まずはロットバルト、その後ろからオディール、そしてスペイン。やたっ、ロットバルトの衣装がパリオペバージョンだ♪ そして、まっすぐに王子のところに歩いていって肩に手を置いて何事か話しかける、家庭教師なロットバルト。道化のエイマンくんがやたら怖がっているのが可愛い。ビュヨンくん、3幕のロットバルトも難なく合格です。気になったのはマントさばき位かな。バサッと音を立てて自分の腕に巻き付けるのに、必ず後で自分の手で巻き直したり。オディールをサポートする為に必要な大切な処置ではあるけど、もう少し上手くやってくれれば更によいな。玉座の前をゆっくり歩きながら王妃をただじーっと挑戦するかのように見続けたり、けっこういい味出してくれてたと思います。

さてドロテちゃんのオディール。華やかで、わかりやすい。フェッテの最後が踊りきれなかったのが残念だったけど、それよりも勢い任せのところが少々気になるところ。でもあの艶っぽさはドロテならではですね。表情が客席に伝わりやすいのも強みになるでしょうし、これから進化していくことを期待してます。3幕のグラン・パ・ド・ドゥはヌレエフ版のパ・ド・トロワに(ほぼ?)なっていたのが嬉しかった。

井脇さんのスペインが見られたのも幸せでした。一緒に組んでる奈良春夏さんも長身なんですね。2人ともピシっと扇子が床について、不敵な笑顔といいレヴェランスのタイミングといいぴったり。いい組み合わせになっているなーと思いました。平野玲さんと後藤晴雄さんの組み合わせももっとちゃんと見たかったのだけど、どうしても女性陣に目が行ってしまって。あ、でも平野さんカッコよかった〜。

第4幕。
4幕のミリアムは2幕よりずっとずっとよかったです。気高さと愛と悲しみと赦しと、全てが伝わってくるオデット。ルグリとのバランスもすごくよくなっていてドラマティックでした。4幕って時間的にはとても短くて、そうたくさんの見せ場がある訳ではないのが勿体ない。もっとこの時の彼女のオデットを見たかった。そして、東バのハッピーエンド版を用いた今回のエンディング、ルグリとミリアムにはハッピーエンドがよく似合っていました。

王子とロットバルトの戦いのシーンは少々バタバタしてたかな。羽をもぎ取られたロットバルトが、その羽を王子に投げつけられるのだけど、床に落ちたその羽を拾いつつスモークにまぎれて退場...しかも妙にタイミングがズレたところで変な音と特殊効果の煙...。これはビュヨンくんが悪いのではないから気の毒だった。受け取りそこねた羽、他の日はビシっとキャッチして退場したりしたのでしょーか。それもまた何と言うか。東バのバージョンってそれがデフォルトなんでしたっけ?

見に行く予定だった18日は行けなかったので、結局この日が私のルグリ・ガラ最終日になってしまったのですが...一部分だけでもルグリのジークフリートが見られた事を幸せに思います。今後も何回かは、ルグリの全幕が日本で見られるとよいのですけれど。ふー、それにしても長いツアー、ダンサーのみなさんも本当にお疲れさまでした。なんだか、Aプロを見たのがずいぶん昔のような気がします(笑)。