2007年9月1日ソワレ 新国立劇場 オペラパレス

クレジット

指揮:アレクサンドル・ポリャニチコ(マリインスキー)、パーヴェル・ソローキン(ボリショイ)/演奏:東京ニューシティ管弦楽団

第1部

「アルレキナーダ」

振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、アントン・コールサコフ

2人ともAプロより生き生き楽しそうに踊ってました。かわいらしい人形同士の戯れ合いといった風情でマイムも愛らしい。それがまたオブラスツォーワによく似合って可愛いのなんの。コールサコフも彼女の可愛い世界を壊さないキャラで、何とも愛らしいパ・ド・ドゥでした。

「病める薔薇」

振付:ローラン・プティ/音楽:グスタフ・マーラー
ウリヤーナ・ロパートキナ、イワン・コズロフ

テープ演奏。最初にフランス語で何事か台詞が流れ(ブレイクの詩?)ました。ロパートキナはピンクの薔薇の花弁を思わせるドレスと緑のイバラのようなヘッドピース、コズロフは上半身裸で下はグレーのタイツだったかな?運命を甘受して滅びていく、というテーマが「瀕死の白鳥」と重なる部分がありますね。相手役がある分、こちらの方はどこかスイートな要素すら感じて、不思議な感覚に陥りました。コズロフは"全てを焼き尽くすような情熱を持つ虫"というよりは、薔薇全体を包みこんでいくような印象。美しい薔薇を滅ぼすつもりはないのに結果的にそうなって行くような。テープの最後がブツっと切れたので、余韻が損なわれたのは惜しかった。

「眠れる森の美女」第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アリーナ・ソーモワ、アンドリアン・ファジェーエフ

出て来た瞬間に、その麗しい王子さまっぷりに目がハート。そう、これが見たかったのー。やっぱり王子がお似合いです。うるわしの5番ポジション(意味不明...)。音にピタピタとハマるのは彼としては至極当然の事なのに、このペアにあってはこれほどに幸せを感じる瞬間になってしまうとは。ソーモワの輝ける存在感はとても素晴らしいと思いますが、私はやっぱり音に対しての雑さが改善されない限りいつまでも苦手だろうな、と認識しました。指導者やカンパニーも、期待しているなら丁寧に育ててあげないともったいないよ〜。


「ジゼル」第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジュール・ペロー、ジャン・コラーリ、マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン
オレシア・ノーヴィコワ、ウラジーミル・シクリャローフ

生きのいいジゼルとへっぴり腰のアルブレヒトは、いくら母親目線の私といえども珍品を見たな、とちょっと笑ってしまいました。ノーヴィコワは身体能力が優れているので振付を楽々こなす事はできるのだけど、勢いがついちゃう事もあって精霊には見えにくい。ガラのジゼルは難しいよね。シクリャローフはねー、応援してるんですよ、応援してるんですけど。すっごい腰を落としたところからのよっこいしょー!なリフトは、まだ筋力が足りないんだよねぇ...。丁寧に、という心掛けはとってもよいと思うので、素直に育っていって欲しいです。で、またカーテンコールの時にノーヴィコワにコソコソなにか話しかけつつ、2人とも居心地悪そうにすぐ引っ込んじゃった。マリインスキーの殿方なら、女性はちゃんとエスコートしなくちゃね。がんばれ。

「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」アダージョ

振付:ウィリアム・フォーサイス/音楽:トム・ウィレムス
イリーナ・ゴールプ、イーゴリ・コールプ

と、思ったらこっちは輪をかけて珍品でした。今までに見たイン・ザ・ミドルとは全く別もので、あれ?こんなだったっけ?とハっとしたところが何カ所もありました。2人の身体能力が高すぎて見えないハズの物まで見えちゃったんでしょうか。すごく短かったのであっという間に終わってしまって残念。もっとじっくり見てみたかったです。ゴールプについては今回"不思議なコ"認定の仲間入り。フィナーレでも嬉しそうに(って後ろ向きだから顔は見えないんだけど)お尻振ってたなぁ。コルプは、Aプロでは薔薇仕様だったのでわかりませんでしたが、かなり不思議な髪型になってました。後ろだけソフトモヒカン的になっていて、短い前髪も更にぷっつり2段になっていたような。で、そのモヒカンと短い方の前髪が一段濃い色にカラーリングしてあったように思うのですが。ヴァケーション仕様、だと信じたい(笑)。

「タリスマン」パ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
エカテリーナ・オスモールキナ、ミハイル・ロブーヒン

このペアのこの演目はオールスターガラで見たよ、とロブーヒンの衣装を見て思い出しました。オスモールキナの踊りを見てると私はホントに幸せになります。押しが強くないので、彼女みたいなタイプが好きな人以外には印象に残りにくいと思うけど、去年よりずっと安定していて素晴らしかった。ロブーヒンはねー、いつもオスモルキナに注目しちゃうからあまり見てなくてゴメン。でも彼女が軽やかに宙を舞うのもあなたの力強いサポートのおかげ。

「瀕死の白鳥」

振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カミーユ・サン=サーンス
ウリヤーナ・ロパートキナ

ソワレの白鳥は、穏やかに死を受け入れる静かで気高い白鳥でした。ゆったりと羽ばたくアームスの究極の美、細やかなパ・ド・ブーレ、全てを記憶に焼き付けるべく瞬きもせずに息を詰めて見つめていました。生で見られた事に感謝。私の一生の宝物です。

「海賊」

振付:ピョートル・グーセフ/音楽:リッカルド・ドリゴ
ヴィクトリア・テリョーシキナ、レオニード・サラファーノフ

テリョーシキナの典雅を堪能しました。サラファーノフは心配になるほど不調。一体どうしちゃったのかな。最後は意地でまとめあげて、盛り上げてくれましたけど。やっぱりこのペアは互いに遜色なく存在感もテクニックも兼ね備えているので、コンサートピースはすごく盛り上がります。楽しかった〜。

第2部

「ばらの精」

振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー ニーナ・カプツォーワ、イワン・ワシーリエフ

ワシーリエフは薔薇の精というよりやんちゃ坊主。無邪気に飛び回ってました。さすがにジャンプが高くて、それでこの演目を踊ることになったのかもしれませんが、誘惑しに来たのではなく飛び跳ねに来た小僧っこでした。カプツォーワはホントにかわいい。小僧に目を奪われて、彼女の踊り自体はあまり覚えてないのが残念。

「ライモンダ」第2幕のアダージョ」

振付:マリウス・プティパ/改訂振付:ユーリー・グリゴローヴィチ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ ネッリ・コバヒーゼ、アルテム・シュピレフスキー

絵本から飛び出したような美しいカップル。シュピレフスキーはマントありでキラキラでした。で、薄ーいブルーのチュチュを来たコバヒーゼがまた輝くばかりのライモンダなの。アダージョだけだったので、あっという間に終わってしまって残念でした。ホント夢見るような一時。また2人によく似合うんだよねぇ、このアダージョが。コバヒーゼのライモンダ、いつか全幕で見せてほしいなぁ。

「白鳥の湖」第3幕の黒鳥のパ・ド・ドゥ」

振付:マリウス・プティパ/改訂振付:ユーリー・グリゴローヴィチ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー エカテリーナ・クリサノワ、ドミートリー・グダーノフ

クリサノワ、いいなー。踊りは手堅いし表情もあって魅せられました。ちょっとセメニャカみたいなところがあるなーと感じたのでセメニャカに師事しているのかと思ったら、先生はスヴェトラーナ・アディルハーエワだそう。グダーノフは踊ってるうちに胸元が真っ赤になるんだね。ピルエットのプレヴァレーションの後の、地面を蹴る時の脚の形がけっこうユニークだったのが印象的。回ってしまえばとても綺麗なんだけど。

「スパルタクス」第3幕のパ・ド・ドゥ」

振付:ユーリー・グリゴローヴィチ/音楽:アラム・ハチャトゥリアン スヴェトラーナ・ルンキナ、ルスラン・スクヴォルツォフ

ルンキナも自分に似合う演目をきっちり選んで持ってきたんですね。ドラマティックなパ・ド・ドゥでうっとりしながら見ていました。スクヴォルツォフも素敵なスパルタクスでした。リフトも盤石だったし。もっといろんな踊りを見てみたいなー。

「ミドル・デュエット」

振付:アレクセイ・ラトマンスキー/音楽:ユーリー・ハーニン ナターリヤ・オシポワ、アンドレイ・メルクーリエフ

わーお!これはすごかった。黒い背景に、黒の衣装で腕と脚だけがむき出しのオシポワが後ろ向きに立っていて、その向こう側に黒のタンクトップで腕をむき出しにしたメルクリエフ。メルクリの力強い支えによって、オシポワが身体を自在に、やがて激しく動かしていくのが圧巻。息もぴったり。音と戯れていたのがいつしか音に踊らされていくような感覚が快感でした。オシポワの激しい動きに圧倒されてしまったけど、メルクリエフのむき出しの腕がしっかり彼女を支えていたからこそで、その腕が私のツボでした。ああ、こんなにしっかりしたサポートが出来て綺麗なお顔でノーブルに踊れるコがボリショイに行っちゃったなんて、マリインスキーの損失だわ...。一体どうやって落としどころをつくるんだろうと思いはじめてからエンディングまでがけっこう長かったかな。パンフレットによると倒れ込んだ後踊り出すのは別のペアらしいのですが、ガラだと自分たちでもう1度起き上がって踊らなきゃいけないから、踊る方も大変だし観る方の受け取り方も変わってくるよね。そう何度も見たいとは思わない作品だけどすごく面白かったし、音が生オケなのもプラスに働いてたと思います。

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ/改訂振付:アレクサンドル・ゴールスキー/音楽:ルードヴィヒ・ミンクス マリーヤ・アレクサンドロワ、セルゲイ・フィーリン

盛り上がりましたー!やっぱりドンキはこれぐらい盛り上げてくれないと。アレクサンドロワ、男前!ニカーって笑いながらフェッテを超高速で回ってましたよ。指パッチン!ってならしてポーズ付けるのも格好良すぎ。フィーリンはジャンプこそそう高くはないものの、ピルエットとかすっごい気合いいれて回ってました。なんか、「ファラオ」の時と顔が変わってたよフィーリン(笑)。渾身のパフォーマンス、堪能させていただきました!


BプロのフィナーレもAプロに準じたもの。ルンちゃんはスクヴォルツォフに例の難易度の高いリフトをされた状態で出て来たので、大喝采を浴びていました。カーテンコールでは、アレクサンドロワが指揮者を迎えに行く順番を間違えて「てへっ間違えちゃった」って感じだったのがかわいかった。ロパートキナが指揮者を迎えに行って戻ってくる時にアレクサンドロワと何か笑いながら言葉をかわしていたのも微笑ましかったし。ソワレでは芸術監督は出てこなかったです。私たち観客はもちろんたっぷり楽しませていただきましたが、ダンサーのみなさんもニコニコと楽しそうにしていてくれたのが、とても嬉しかったです。普段目にする機会の少ないソリスト級や若手ダンサーたちの踊りが見られるよい機会でもあるので(そしてそれは、ダンサーたちにとっても興行主にとってもファン獲得の機会でもあるハズ)、本当に恒例にしてほしいなーと強く思います。