2007年11月7日 新国立劇場オペラ劇場

クレジット

演出・振付:牧阿佐美/音楽:エクトール・ベルリオーズ/編曲:エルマノ・フローリオ/舞台装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ/照明:沢田祐二/舞台監督:森岡肇
指揮:エルマノ・フローリオ/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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演出・振付:牧阿佐美/音楽:エクトール・ベルリオーズ/編曲:エルマノ・フローリオ/舞台装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ/照明:沢田祐二/舞台監督:森岡肇
指揮:エルマノ・フローリオ/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

マルグリット・ゴーティエ:酒井はな
アルマン・デュヴァル:山本隆之
デュヴァル卿(アルマンの父):森田健太郎
伯爵:冨川祐樹
プリュダンス:湯川麻美子
ガストン:中村誠
ナニーヌ(召使):堀岡美香
村人:高橋有里、さいとう美帆、八幡顕光
ジプシー:寺島ひろみ、大和雅美、難波美保、千歳美香子、寺田亜沙子
メヌエット:マイレン・トレウバエフ、吉本泰久
アラブ:寺島まゆみ、イルギス・ガリムーリン、酒井麻子、細田千晶、今井奈穂、大湊由美
チャルダッシュ:遠藤睦子、西山裕子、丸尾孝子
タランテラ:さいとう美帆、グリゴリー・バリノフ、福田圭吾
医者:エリク・T.クロフォード


感想

初日は前方席で、この日は1階後方ブロック最前席で見ました。やはり前方席では照明効果の全ては掴めていなかったようで、「ああ、こんな風になってたんだー、やっぱり照明は素敵」と再認識。具体的には、1幕2場でのデュヴァル卿とマルグリットのやりとりのところとか。ライトでつくられた赤いラインの道を彼女のとりまきだった紳士たちが歩いて(そしてマルグリットを見下ろす)行くのは面白いなぁ、と。他にもいくつか印象的なものがありました。でも、初日に「これは綺麗!」と思った、終幕のアルマンとデュバル卿の間に立つマルグリットにブルーの照明がパッとあたるシーンがなかった気がする...私が何か思い違いをしているのかな?別の場面だったっけ?

予想通りザハロワ/マトヴィエンコとはかなり違う物語になってました。乱暴にも一言で表現するならば、ザハロワはクリスタルの純愛、マトヴィエンコも呼応するように純愛路線だった。はなさんは清濁清濁併せ呑んだ大人の炎のような愛、かなぁ。山本さんは「そんな初心な青年がクルチザンヌのパーティに来たら火傷するに決まってるのに!」というくらい無防備でまっすぐ。彼自身がダンスマガジンの座談会(酒井/山本/本島/八幡)で「純粋な青年で、ちょっと世間知らずだけど」と評していた通りのアルマンでした。

はなさんは、すばらしい女優でした。アルマンのまっすぐな想いを最初は笑って受け流していたのが、いつしか本気になり、幸せで平和な郊外での生活を経て、デュヴァル卿の申し入れを否定し、懇願し、絶望し、受け入れる。そして予期せぬアルマンとの再会に愛を再認識し、ひどい仕打ちにズタズタになり、、、病床でアルマンを迎える為に身支度を整え、命の火が消えてしまうまで、彼女のマルグリットはその心情が手に取るようにわかる。こちらが2度目とあって、他に気を取られることなく彼女の差し出すものを受け取る事が出来た、というのも大きいと思いますが、さすが、と思いました。

山本さんのアルマンは原作のアルマンを思わせる子供っぽさがあった、と思う。マルグリットのことを思うと訳がわからなくなるくらいの激情に流されてしまう、その激しさの表現が秀逸でした。1幕最後でマルグリットに捨てられて絶望したアルマンが2幕1場のプリュダンスの夜会にやってくる様子は、もう1度彼女を我が手にしたいという愛情と裏切りに復讐したい憎しみとでないまぜ。それが、彼が入ってくるだけでわかった。伯爵を白手袋で平手打ちして決闘を申し込むところは本当にゾクゾクするほど熱い男だったわ。マルグリットに拒絶されて激昂して札束(なんでチャチい固まりのお札にしちゃったんだろう...)を投げつけるところも。踊りもいつも通り丁寧で、アームスの能弁さが際立っていました。ひいき目が入っているかもしれませんが、「マクミラン風」な振付もかなりよかった気がする。あと少し背中と脚にニュアンスを含ませることができれば、デ・グリューも行けるんじゃない?

それと、秀逸だったのが森田健太郎さんのデュヴァル卿。老けメイクも非常に品があったし、なにより、はなちゃんとのパ・ド・ドゥが素晴らしかった。森田さんが客席を向いて立っているところにはなちゃんが背中合わせに(つまり後ろを向いて)彼の手を掴んで踊るという振付が何回か繰り返されるのだけど、はなちゃんの手が行くところに必ず健太郎さんの手があるの。イリインさんとザハロワはここまで息の合ったところはないから、余計にすごいと思えた。

冨川さんの伯爵はプライド高そ〜でなかなかよかったです。前回アラブでフェロモン垂れ流しだった中村誠さんはこの日はガストン。えーと、フェロモンは肌の露出度に関係してる?(笑)ガストンはキャラクターにも癖がないし見せ場も少ないしで損な役ですよね。ただ、 プリュダンスの湯川麻美子さんと共に「一癖あるキャラ」にはなっていて、プリュダンスの夜会でカウチで寄り添う2人はとても退廃的でよい感じ。お医者さん役のエリク・T.クロフォードさん、最初と最後にちょっと出てくるだけの役だけど雰囲気ぴったりでしたね。

村人のパ・ド・トロワは高橋有里、さいとう美帆、八幡顕光の3人。さすがにぴったり揃ってました。振付がせわしなくて音も取りにくそうだけど、しっかりまとめて来てました。八幡さんは今までクラシック演目では道化などの一癖ある役でしか見た事なかったのですが、元々がしっかりしたクラシック基礎を持った人だから、こういうパ・ド・トロワを踊ると映えますねー。「シンデレラ」ナポレオンとか「椿姫」メヌエットの"受難キャラ"も上手いけど。

さて、ディヴェルティスマン。何と言ってもジプシーの寺島ひろみさん!さわやかなのに妖婦のニュアンスがあって、どこぞの貴族がジプシー女に手を出して出来た娘という雰囲気。凄みすらある存在感と軽いジュテ!素晴らしかったです。マイレンのメヌエットのお相手は本日は吉本泰久さん。相手の顔を見た後の彼の演技は最高です。マイレンはこの日も美しい手脚の運びと扇で隠したお顔のギャップで楽しませてくれました。

アラブは寺島まゆみさんとガリムーリン。私、4日のレビューに「アラブの男性(その日は中村誠さん)は最初からいる」と書いたのですが記憶違いだったようで、社交界の面々が一通り踊った後に「さあ、舞踊一座が参りましたよ!お代は見てからで結構!」って感じで登場してました。ガリムーリンにはさすがに中村さんのフェロモンはなく(笑)、どちらかというと「海賊」のランケデム的なある種のいかがわしい雰囲気、かな。まゆみさんのアラブもとてもよかったです。ディヴェルティスマンで姉妹2人とも出てくると不思議な効果が生まれますね。

チャルダッシュの3人はやっぱり踊りにくそうかも。というか、きっと振付がチャルダッシュとしては半端なんだよねぇ。とてもしっかり踊っているのに、効果が出切っていないようでもったいない。さいとう美帆、グリゴリー・バリノフ、福田圭吾によるタランテラも見事でした。福田圭吾くん、バリノフくんに全然負けてない。小さな演技も可愛かったし、もっといろいろ見てみたい楽しみな人です。ダンサー同士の踊り比べ的な部分が拮抗しているのでスリリングに楽しめたし、3人がかなりしっかり揃っていたので見応えがありました。

ということで、キャスト違いの部分をしっかり堪能しました。2度見ても、ダンサーたちがあれだけ大熱演でも、さらっとした印象は変わらず。この日も芸術監督がカーテンコールに登場しました(山本くんが呼びにいったの)。カンパニーのダンサーでの初日だから、かな。