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レビュー「随想—バレエに食われる日本人—」石田種生

随想―バレエに食われる日本人

著者:石田種生
出版社: 文園社 (2007/11)
発売日: 2007/11
商品の寸法: 17 x 11 x 1.4 cm

日本におけるバレエの歴史、著者が国内外での経験談、日本と海外諸国との風土や民族性の違いからのバレエ考察、、、などがからみあった『随想』となっています。「バレエに食われる日本人」というタイトルが印象的ですが、その心は、いつまでも「借り物」のバレエから抜け出せず、日本人らしいバレエを作り出せないでいる現状、あるいは職業として成り立たないバレエ業界の現状を物語っているようです。

風土や民族性の見地からバレエ(またはダンス全般)を見るというのは全く持って新鮮であり、非常に興味深いものでした。まずは言葉の問題。”踊りの根底には言葉の抑揚がつきまとっている”のだから、用語が全てフランス語で出来ているバレエを日本語のまま踊ってはいけない、”歌うように踊れ”とうのはそういう事だ、と。

他にも農耕民族と狩猟民族の違いやら、気候の違いやら、そんな感じで繰り出される数々の民族性の違いは、日本人がバレエを踊る事自体が間違いなんじゃないかと、絶望的にもなってきます。ただ、その違いを理解した上で克服する事はある程度は可能でしょうし、更にその違いゆえに日本オリジナルのバレエを生み出す事が必要だろう、というのが著者の持論。

持論を展開する上で、様々なジャンルの本からの引用があり、その読書家っぷりにも感心しました。石田種生さんといえば日本を題材にした作品をお作りになる方ですが、日本にこだわるようになったきっかけや作品を作り上げるまでの様々なエピソードも読む事ができます。

また、本筋からちょっと外れたところにも面白いお話がたくさん。例えば、海外のオペラハウスなどでヘボ歌手にトマトがとんだなんて話を聞くと、「観客はわざわざトマトを持ってオペラを見にいくのか?」なんて不思議に思っていましたが、この本の中に”サン・カルロ歌劇場の前に熟れたトマトだけを売っている店があり、けっこう繁盛したそうである”なんて書いてあって笑ってしまいました。そういう見聞1つでも、私も日本人だなーと笑ってしまった次第。

最後に1つだけ。
推測なのですが、たぶん著者は以前よりこれらの文章を書き溜めていらしたのではないでしょうか。で、出版にあたってまとめあげられたのだと。出典が書いてあるのはほんの一部だったので、いつ頃書かれた文章なのかわからないものも多かったのですが、たぶん中心は最近書かれたものだろうと思います。ただ、いろんな時期に書かれた文章が、書いた当時の時制で書かれているので、読んでいて時々「ん?これはいつ書かれたのだろう...」と本をページを遡ったりして、私には少々読みにくい部分がありました。

しかし、それを除けばとても興味深い本であることは間違いありません。なお、巻末にはバレエ作品/人名等のリファレンスがついていて、とても良心的な本でもあります。作品については現在は上演されていない作品についての解説もありますから(もちろん、それらは本文中にタイトルが出て来た作品たちです)、参考になるのではないでしょうか。

Comments [2]

No.1

ゆうさん
こんにちは。初コメントです。以前なぜかコメント入れられなかったのですよ。

大変興味深い本のご紹介ありがとうございます。すぐアマゾンに行ってポチしちゃいました。よく読んで内容を教えていただいて俄然興味が。読むの楽しみです。

No.2

amicaさん、コメントありがとうございます!
コメントとかTB、よくわからないのですが受け付けられない時があるようでご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

興味を持っていただけて嬉しいです。私にはちょっと内容がすっと入ってこないところもあったのですが(なので3回位読み返しました・笑)、独自の視点でバレエを語られているところが面白かったです。

日本にいるとピンとこない事もあるのですが、きっとamicaさんなら共感なさる点もいろいろあるかもしれませんね。

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プロフィール

ゆう:ただいま劇場通いはお休み中。その間もバレエから離れられずブログ更新していましたが、そちらも現在は滞りがち。どちらも元に戻れるかどうか自分でも心配…。

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