2008年2月9日 ゆうぽうとホール

第1部

「牧神の午後(L'apres-Midi D'un Faune)」

振付:ワツラフ・ニジンスキー/音楽:クロード・ドビュッシー
牧神:ウラジーミル・マラーホフ/ニンフ:井脇幸江
ニンフたち:高木綾、浜野香織、前川美智子、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵

この作品はプリセツカヤとラトマンスキーで見て以来。マラーホフにとっても初演というこの作品、「マラーホフがニジンスキー版『牧神の午後』を日本で初演する」事に意味があるんだよねー、きっと。マラーホフらしい繊細さがあってポーズが綺麗で、ああ日本で踊ってくれているんだわー、としみじみ嬉しかったです。ニンフと牧神の純愛っぽく見えるのが面白いな、と思って見てましが、ニジンスキー版の牧神としてはどうなんでしょう。きっと3日目くらいになると、また違った関係性が出てくるのでしょうけど。

評判のよい井脇さんのニンフ、見られて嬉しかったです。東バの他の女性陣も含め、世界観がしっかり出来上がってますね。素晴らしい。

「エスメラルダ」

振付:マリウス・プティパ/音楽:チェーザレ・プーニ
ヤーナ・サレンコ/ズデネク・コンヴァリーナ

サレンコは小柄でテクニシャンタイプのバレリーナ。足の甲のアーチが綺麗で、それを見せつけるよーに脚を上げるのね。踊りの質自体はきちんと訓練された好感が持てるダンサーなのだけど、こういうガラ公演でのアピールの仕方はもう少し研究してほしい気がする。この演目でももう1つの「ドンキ」でもバランスや回転などのテクニックを強調していたけれど、バランス系の音から外れるアピールは魅せ方が難しいんだよね。タンバリンの音も音楽とズレていたし。音楽の高揚感を殺さないアピールをした方が更に魅力的だと思う。ちょっと勿体ない。

コンヴァリーナはすごく丁寧に踊っていたと思う。急造ペアだけど2人の踊りのタイミングとかも合わせていたし、サポートも上手かった。踊りも綺麗。個性を印象づけられる作品を1つでも持って来てくれたら、イメージ変わったかもしれないのになぁ。バレエフェスの時も「エスメラルダ」と「ドンキ」(ガラのチャイパドは見てません)だったし。

「カルメン」

振付:アルベルト・アロンソ/音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオンシチュドリン
マリーヤ・アレクサンドロワ/セルゲイ・フィーリン

アレクサンドロワの圧倒的な存在感に尽きますねー。いや、参った。ホセどころか会場中を魅惑して楽しそーに踊るマーシャの、その指先1つで、目線の動きで、すっかり彼女の虜。アロンソ版のカルメンとしては、もう少し踊りに制約がある方が「らしく」て私は好きなんだけど、もうそんなの超越しちゃって問答無用、自由自在のカルメンでした。いやはや、彼女はもう他の出演者とは別の次元にいますね。圧倒されました。カーテン前ではお得意の指をパチパチ鳴らしてのレヴェランスも。ノリノリです。

フィーリンは前髪をおろして登場。なんですか〜その可愛いお姿は。これも別の意味でびっくり。出て来た時からすっかりカルメンの魅力に絡めとられて身動きできなくなってました。私としては、けっこう新鮮だったなぁ、そういうフィーリン。


「くるみ割り人形」

振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/マクシム・ベロツェルコフスキー

やーっと、マックスに再会できたー(感涙)。2人の隅々までシンクロする踊りが心地よくて、幸せな気分でした。これが見たかったのよ〜。イリーナは、去年の世界バレエフェスでも感じたけれど、目線とか首の傾け方とかがちょっと過剰な感じなのが気になる。マックスは文句なく素敵な王子。絶対夏も来てよね!と念を飛ばしまくりました(笑)。

第2部

「白鳥の湖」第2幕 〈全編〉

振付:レフ・イワーノフ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
オデット:ポリーナ・セミオノワ/ジークフリート王子:ウラジーミル・マラーホフ
悪魔ロットバルト:木村和夫/他 東京バレエ団

私、東バの白鳥は縁が薄くて、たぶん木村さんのロットバルトは初めて見た気がする。綺麗なジュテだったなー。全力投球で好感度高し。今度はぜひ3幕のロットバルトも見なくては、と思いました。東バの白鳥さんたちでは、3羽の西村さんにどうしても目が行ってしまう。コール・ドはけっこう揃ってたと思うけど、やっぱり足音がね。

マラーホフは牧神よりやっぱり王子の方がずっとずっと素敵です。王子姿だと、痩せたのがよくわかりますね。脚が本当にほっそり。踊らない分だけ演技が濃厚で、美への崇拝とか畏敬の念が感じられる王子でした。たぶんマラーホフのジークフリートも見たことないと思うので、全幕で見るチャンスがまだあるといいのだけど。

オデットがマイムで自分の事を語るバージョンだったのはマラーホフの膝の事があるから、なのかな。ポリーナのマイムは何となく王子に甘えている雰囲気があるのが面白かった。たおやかで美しいオデットでした。

第3部

「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"

振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マリーヤ・アレクサンドロワ/セルゲイ・フィーリン

この日一番盛り上がった演目。アレクサンドロワのオディールは、視線を絡めとられたらもう目を離すのは不可能です。色香はもちろんだけど、それ以上に華やかさで場を支配していました。フィーリンの王子なんて手の上で転がしちゃうくらいの勢い。あの難しいボリショイの女性ヴァリもいとも簡単に踊ってしまうし、フィーリン王子に投げキスしちゃう余裕。陥落です、マーシャ、凄すぎ。

フィーリンはちょっと端折ったり着地がピリっとしないところがあったけど、確かこの人ってスロースターターだったよね。佇まい的には見事な王子で、ドラマが見えてよかったです。うーん、ボリショイ来日公演、この2人の「白鳥」も買うべきだろーか...

「アレス・ワルツ」

振付:レナート・ツァネラ/音楽:ヨハン・シュトラウス
ポリーナ・セミオノワ

アレス・ワルツもここのパートは初めて見たと思う。パンフによると、今回ポリーナが日本でソロを踊るにあたって改訂されたそう。最初は無音の中で踊っていて、あとで音と戯れるように踊る感じの作品。テープじゃなく生演奏ならもっと素敵だったに違いない。満ち足りた雰囲気の笑顔と瑞々しさが、ポリーナちゃんの素っぽくて微笑ましかった。途中で思わず湧いた拍手に、「しー」って唇に指を当ててみたりするのも可愛かった。

「スプレンディッド・アイソレーション III」

振付:ジェシカ・ラング/音楽:グスタフ・マーラー
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/マクシム・ベロツェルコフスキー

「スプレンディット・アイソレーション」というと、私はポワントマガジンの表紙になった最初のバージョンの写の印象が強くて、今回はそれが見られるのだと思っていたのです。でも始まってみたらどうやら違う...。あとでパンフを確認したら、これは3つめのバージョンだそう。幕があがると、長ーい白のスカートを舞台にひろげたイリーナが中央に後ろ向きに立っていて、マックスはすみっこにポツンと座っている。彼女に近づきたいけど、スカートが2人を隔てているのね。イリーナがスカートを巻き付けるように回転して2人を隔てる部分がどんどん狭くなっていく、辺りまでが面白かった。イリーナの腕の饒舌さと、マックスの無力感というか、その辺もよくて。

曲がマーラーのアダージェットで、ベジャールさんを思い出してしみじみしてしまいました...。

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヤーナ・サレンコ/ズデネク・コンヴァリーナ

あまり高揚感のないドンキだったなー。「エスメラルダ」の方にも書いたけれど、バランスのアピールが多くて、それが場を盛り上げる方向に行ってないのが残念。

「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ(La vita Nuova)」

振付:ロナルド・ザコヴィッチ/音楽:クラウス・ノミ/ロン・ジョンソン/編集:アルシャーク・ガルミヤン
ウラジーミル・マラーホフ

この公演のためにマラーホフがザコヴィッチに委嘱した新作。マラーホフの美しいムーヴメントが見られて感激でした。よかった、マラーホフが帰ってきた、と思いました。曲はクラウス・ノミ!


フィナーレは、マラーホフが1組ずつ手招きで呼んで登場てはレヴェランス。最後に自らポリーナを迎えに行ってポリーナがレヴェランスした後、みんなに「次はマーくんよ」って感じで促されて「Me?」と戯けてみせる(笑)。毎回思うけど、こんな少人数で楽しませてくれたのか!と驚きです。帰りはみぞれまじりの雪模様でしたが、幸せな気分で帰途につきました。Bプロも楽しみ。若手ペアも、ツアーを経てBプロで見る時は化けてくれてることを期待してますよ〜。