2008年7月17日 東京文化会館 大ホール

クレジット

指揮:デイヴィッド・ラマーシュ/オームスビー・ウィルキンス (ラビット・アンド・ローグ)
管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団

第1部

「ラ・バヤデール」パ・ダクシオン

振付:ナターリア・マカロワ/音楽:ルードヴィヒ・ミンクス/衣裳:セオニー・V・オールドレッジ/照明:小川俊郎

出演:
ミシェル・ワイルズ/デイヴィッド・ホールバーグ

イザベラ・ボイルストン、マリアン・バトラー、アン・ミルースキー、レナータ・パヴァム、マリーヤ・ブイストロワ、メラニー・ハムリック、メリッサ・トーマス、リーヤン・アンダーウッド、アレクサンドル・ハムーディ、コリー・スターンズ

ニコラ・カリー、ツォンジン・ファン、ニコール・グラニーロ、エリザベス・マーツ、エリーナ・ミエッティネン、ジェシカ・サーンド、クリスティーン・シェヴチェンコ、サラ・スミス、デヴォン・トイチャー

メアリー・ミルズ・トーマス、カレン・アップホフ、キャサリン・ウィリアムズ、グレイ・デイヴィス、トビン・イーソン、ケネス・イースター、ダニエル・マンティ、アレハンドロ・ピリス=ニーニョ、アロン・スコット

この演目の前に、一応ファンファーレ的なオープニングの音楽が流れました。この辺に明るくないので曲目などはわかりませんが、そういう心意気が嬉しいと思ってしまう。

コール・ド付きの、ガムザッティとソロルの婚約式からパ・ダクション。コール・ド付きで豪華、と言いたいところだけど背景がホリゾント幕だけだと却って淋しかったかなぁ。踊り出せば気にならないのだけど、幕があがった時にね。

ワイルズとホールバーグには前回来日時よりは華やかさが増していたと思います。ただ、ワイルズのバレエ観というのはどうも理解しにくい...。金髪の美人さんでプロポーションもそう悪くはないけど、ガラであっても「ガムザッティ」という役を生きて欲しいと思う。すごく気合が入っていたのはよくわかったけど、それが強すぎちゃって"高貴さ"が見えなかった。踊りも初日なんでまだ調子が出ていなかったのではないでしょーか。

ホールバーグはデカくなりましたねー。存在感も身体も。悪くないソロルだったと思いますよ。1度全幕で見てみたいなーと思いました。ワイルズとは逆に演技面を尊重したソロルだったのも好感度高し。その分インパクトの強さに欠けたかもしれないけど、それは演目のせいもあるでしょうねぇ。

4人で踊る女の子たちの、右から2人目のコがヘタレてたのが困りものでした。男性陣2人、アレクサンドル・ハムーディ、コリー・スターンズはプロポーションがよく綺麗に踊るコたちだと思いましたが、この日はオペラグラスを忘れたので、あまり細かくはチェックできませんでした。


「マノン」寝室のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/衣裳:ニコラス・ジョージアディス

出演:ジュリー・ケント/マルセロ・ゴメス

ものすごく良かった!ジュリー・ケントは去年のフェリ・ガラで踊ったアシュトン版「真夏の夜の夢」とクデルカ版「シンデレラ」もとても良かったのだけど、この「マノン」も素晴らしかった。前回の来日公演でもボッカと同じ場面を踊っていましたが、この日の方がずっと素敵だったよー。正にマノン。魅惑的で奔放で、目が離せませんでした。

彼女がそれだけ自身の役に没頭できたのも、相手がゴメスだったから、というのも大きいでしょう。決して前回のボッカがどうだったという訳でなく、相性として。情熱的で力持ちで、ジュリーが安心して一緒に踊れる相手だというのが伝わってくる。あのデ・グリューがマノンの足を持ってリフトした状態で、マノンが脚をハサミのように上下に動かす(何て説明だ〜)踊りも、とーっても音楽的でした。

あー、もう1度見たいなぁ、本当に素晴らしいパ・ド・ドゥでした。観客の反応もすごくよかったです。

「白鳥の湖」第2幕グラン・アダージオ

振付:ケヴィン・マッケンジー/音楽:P.I.チャイコフスキー/衣裳:ザック・ブラウン

出演:
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/マキシム・ベロセルコフスキー

カリン・エリス=ウェンツ、レナータ・パヴァム、アン・ミルースキー、ジャクリン・レイエス、ヒー・セオ、クリスティ・ブーン、マリーヤ・ブイストロワ、カレン・アップホフ

ユン・ヨン・アン、ジェマ・ボンド、イザベラ・ボイルストン、ニコラ・カリー、ツォンジン・ファン、ニコール・グラニーロ、イサドラ・ロヨラ、アマンダ・マグウィガン、シモーン・メスマー

エリーナ・ミエッティネン、ローレン・ボスト、サラ・スミス、サラワニー・タナタニット、デヴォン・トイチャー、メアリー・ミルズ・トーマス、リーヤン・アンダーウッド、ジェニファー・ウェイレン、キャサリン・ウィリアムズ

こちらもコール・ドつき。この2人の同じ場面は2002年の来日公演ガラで(コールド抜き)見た時にものすごい衝撃を受けて、またこの場面を2人で見たいと望んでいたのです。だから、今日2番目に(1番はもちろんアレ↓というかカレ↓です)楽しみでした。

とはいえ近年のイリーナのバレエには(といってもガラでしか見ていませんが)悪い意味でアメリカナイズしていると感じる事もあったので、オデットまで変化していたら泣いちゃう...という怖さもあったりして。

しかしそれは杞憂でした。もちろん当時と同じ解釈で彼らが踊っているハズがありませんから、前と同じ衝撃を受けることはありませんでした。でもそれは判り切っていたこと。

当時はガラスのような繊細さを感じたように覚えているのだけど、この日の2人は成熟していて、オデットの王子への深い信頼と心の底に灯った安堵のようなものを感じました。この場面の男性ダンサーのお仕事は本当にサポートだけなのですが、マックスは少しばかり不調なような気もかすかに...。もちろん何かサポートに失敗したとかそういう事ではなかったのですが。イリーナの成熟したオデットを見たら、全幕で見るのが更に楽しみになってきました。

あ、そうそう。コール・ドについては全く目に入っていませんでした。どーせ全幕でたっぷり見られるからね。

「シナトラ組曲」

振付:トワイラ・サープ/舞台指導:エレイン・クドー/音楽:フランク・シナトラ/衣裳:オスカー・デ・ラ・レンタ/照明:ジェニファー・ティプトン/歌:フランク・シナトラ

"夜のストレンジャー" "オール・ザ・ウェイ" "ザッツ・ライフ" "マイ・ウェイ" "ワン・フォー・マイ・ベイビー (アンド・ワン・モア・フォー・ザ・ロード)"

出演:ルチアーナ・パリス/マルセロ・ゴメス

1演目を挟んで、またゴメスの登場。ジュリーとハードなパ・ド・ドゥを踊った直後に、更にハードな「シナトラ組曲」では、いくら若いゴメスでもキツいでしょうが、トリは「ドンキ」で動かせないとなればこういう順番しかないわけで...。コレーラの直前の降板により登場する事になったのですが、いくら彼のレパートリーにある作品だとしても、大変だよねぇ。。。と思ってしまいました。実際、「マノン」に比べれば身体のキレはやはり少し落ちていたように思います。

大きな身体に甘いマスクのゴメスと小柄でパワーを秘めたパリスの超絶技巧なパ・ド・ドゥは、まるで盛装した男女が子供のように一心不乱に戯れているようでもあり。これはこれで楽しかったんだけどね。バリシニコフが踊っている映像も持っているけど、記憶が薄れちゃったので何とも言えないのですが、んー、たぶんこの演目って、もう少し何と言うか「間」とか「遊び」とか「阿吽」とか、、、そういう微妙なニュアンスを楽しめるともっといいんだろうな、とも。

翌日、相手役が変わってゴメスがどう変わるかも楽しみ、と思いました。(ホントは翌日はミスティ・コープランドが踊る予定だったが、最終的にはこの日と同じ組み合わせになったのですが)

「ドン・キホーテ」グラン・パ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:ルードヴィヒ・ミンクス/衣裳:サント・ロクァスト

出演:ニーナ・アナニアシヴィリ/ホセ・カレーニョ

幕があいて2人が登場しただけで大喝采!ニーナは去年よりすっきりしたかな?という印象。カレーニョは黒タイツに白シャツ、赤ボレロ姿でした。

カレーニョは普段ガラで見ても、決して過度に技を見せつけるタイプではありません。この日も全開って訳ではなかったけど、ニーナに煽られてたかも(笑)。ピルエットは相変わらずの絶品で全く軸がブレず、何度見ても溜め息もの。

ニーナは全身で私たちを喜ばそうとしてくれているのが判って、こちらもワクワク。あの愛らしい扇のヴァリエーション!グラン・フェッテは全てシングルだったけど、両手を腰/片手でスカートの裾をつまむ/シンプルなフェッテの3つでたっぷり楽しませてくれました。多少の衰えは感じるにしろ、そんなのどうでもいい!のです。だって観た後にあんなに幸せになる事ってそう滅多にないもの。

第2部

「ラビット・アンド・ローグ」

振付:トワイラ・サープ/音楽:ダニー・エルフマン/衣裳:ノーマ・カマリ/照明:ブラッド・フィールズ/音響デザイン:ダン・モーゼス・シュライヤー/振付補佐:キース・ロバーツ

ローグ(ならず者):イーサン・スティーフェル
ラビット(紳士):エルマン・コルネホ

ラグ・カップル:ジリアン・マーフィー、デイヴィット・ホールバーグ
ガムラン・カップル:パロマ・ヘレーラ、ゲンナジー・サヴェリエフ
カルテット:加治屋百合子、マリア・リチェット、カルロス・ロペス、クレイグ・サルステイン

アンサンブル:クリスティ・ブーン、マリアン・バトラー、ミスティ・コープランド、シモーン・メスマー、ジャクリン・レイエス、サラワニー・タナタニット
トーマス・フォースター、ジェフリー・ガラデイ、アレクサンドル・ハムーディ、ブレイン・ホーヴェン、パトリック・オーグル、アイザック・スタッパス

【序曲】〜【1.浮かれ騒ぎ】ローグ、ラビット、アンサンブル、カルテット〜
【2.ラグ】ラグ・カップル、カルテット、アンサンブル、ローグ〜
【3.リリック】ラビット、カルテット&アンサンブル、女性、ローグ〜
【4.ガムラン】ガムラン・カップル、カルテット、アンサンブル、ラビット、ローグ〜
【5.フィナーレ】ラビット、ローグ、ラグ・カップル、ガムラン・カップル、カルテット、アンサンブル


25分間の休憩の後、いよいよイーサンが登場する「ラビット・アンド・ローグ」。NYでは賛否両論という話を聞いていたのですが、正直言って演目は何にしろイーサンがメインな訳だし、彼が日本に来て踊ってくれる動機としてこの作品が大きいのなら(ホントにそうなのかは知りませんよ)それでよい、と思っていました。

幕があくと、暗い舞台にぼんやりと人影。イーサン!そこにいました。ゆったりと踊り始めると舞台もだんだん明るくなってきます。ほぼ4年ぶりの生イーサンなんで、見たら泣いちゃうかもと思っていたのですが、ぜーんぜんそんな事はありませんでした。むしろ、もう吸い寄せられて見つめ続けてましたね。

一応ストーリーのようなものはあって、ならず者と紳士が最初は互いにあまりよい感情を持っていないものの最後には友情で結ばれる、という流れ。そこにラグ・カップル、ガムラン・カップル、カルテット、アンサンブルが絡み、コミカルだったりエネルギッシュだったり、ちょっとしたドラマを織り込んでありました。

ABTのダンサーたちに親しみがある人たち程、この作品に流れるユーモアを楽しめたのではないでしょーか。私はABTが日本に来てくれた時に見るだけのファンだけど、この作品の中でダンサーたちが見せる(決してクラシック作品では見せない)表情をとてもキュートだと感じて、更に親近感を覚えてしまいました。

イーサンもエルマンも観たところ紳士だのならず者だのというよりは、やんちゃ坊主。互いに相手に興味があって、だからイーサンはちょっかいを出すし、エルマンはそれから逃げつつも、時々反応してダンス合戦になったり。このダンス合戦になった時はエルマンの踊りが際立ってました。それこそ紳士並の美しいダンス。イーサンはつま先の美しさ、ラインの美しさは相変わらずで嬉しかったけど、エルマンと並ぶと意外にパリっと決まらない。ちょっと空回りしてたのかな...

そんなならず者イーサンは、登場したラグカップルのことも「拳を握れ!」焚き付ける。最初は澄ましてラグのリズムで踊るジリアンとホールバーグくんなんだけど、いつしかジリアンにもならず者の戦闘的な気分が移ってしまい、ついに武道の構え...(笑)。焦ったホールバーグの顔が可笑しかった。

2人が踊っているのを横目に袖に引っ込むイーサンが、ジリアンの方を見て「ナイスバディ!」と手で小さく身振りをしたのには笑いました。そして小さく投げキスしながら去っていく、と。

カルテットの4人が登場した時に、しみじみ「ああ、ABTを見ているんだなー」と思った自分にびっくり。カルロス・ロペス、クレイグ・サルステインの2人が出てくると、そう思って嬉しくなってくるんでしょうね。プリンシパルたちは別の機会で見るチャンスがある人が多いけど、ソリスト級はなかなかそういう事もありませんから。

このカルテットの4人は全部で4着くらい衣装を着替えましたよね。最初は黒のドレープのついた衣装、次が女性陣は黒地にキラキラのついたセパレート、次にシルバー系、最後が白系だったかな?とにかく短い時間であっという間に着替えて出てきてはガンガン踊るので、この4人がもしかしたら一番ハードだったのではないでしょうか。

中でもサルステンくんは、紳士とならず者に絡む美味しい役で大活躍。彼の存在が作品のユーモア度を高めていました。リチェットと加治屋さんはセパレート姿の時に見事な腹筋まで披露してくれていました。加治屋さんの資質にとてもよく似合う役柄だった気がします。リチェットはクラシックを踊るところが大好きだったのですが、また別の魅力を見せてもらった感じ。このカルテットはよかったなー。

ガムラン・カップルはサヴェリエフとヘレーラ。この2人はまるで作品中の一服の清涼剤のような存在でした。柔らかくて爽やかで美しいヘレーラに驚かされました。こんな素敵なダンサーだったっけ?と。サヴェリエフの騎士っぷりも素敵でした。ガムランの名がつく位なので音楽にもガムラン的な要素があって面白かったですが、、、実は初日はこの辺で「んー、ちょっと飽きてきたかも」と思っていました。

段々と仲良くなりつつあるラビットとローグが、終盤ではいろんな女の子たちをリフトし合ったりと共同作業をし始めます。いつしか2人を中心にダンサーたちが集まって、一斉に踊ってのフィニッシュ。

初めて見る作品で、しかも45分。曲も初めて聴くものだけに、落としどころが判らない、っていうのは確かにあったかな。私の場合はイーサンが出ているところと出てないところで集中度が全く違ったので、そう辛いとは思いませんでしが、何の思い入れもない大部分の観客のみなさまはキツかった人も多かったのではないかと..。私は次の日にもう1度見るのが重荷とは思わなかったけど、それはもちろんイーサンがいたからってのも大きかったかもね。

イーサンに集中しすぎていたので、それこそアンサンブルの踊りまではほとんど目に入っていませんでしたが、舞台上のダンサー全てに高い身体能力と集中力を要求する作品であった事は間違いありません。でもってABTにはこういう作品が似合うと思いました。アンサンブルが揃っていたか否かすら見てなかったので何とも言えませんが、みんなよく踊っていたのではないか、と。

カーテンコールでは、イーサンとエルマンが爽やかな男の友情!とばかりにがっしりハグ。晴れ晴れとしたイーサンの表情が見られて本当に嬉しかったです。

そうそう、この曲はダニー・エルフマンがこの作品の為に書いたものですから、当然、東京ニューシティ管弦楽団のみなさんにとっても初めてのスコアだった訳ですよね。しかもスピーカーから流れる録音と合わせて演奏という大変さ。オケのみなさんもウィルキンズさんもお疲れ様でした!第1部を指揮されたラマーシュさんは構成上 舞台の上でご挨拶はなさいませんでしたが、ラマーシュさんにも拍手を。私、ABTは常任指揮者のみなさんたちも大好きなのです(ほほ)。