2008年7月20日ソワレ 東京文化会館大ホール

クレジット

演出:アンナ=マリー・ホームズ/振付・台本改訂:コンスタンチン・セルゲーエフ/原振付:マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、オリデンブルク公爵/台本:ジュール=アンリ・ド・サン=ジョルジュ、ジョゼフ・マジリエ/装置・衣裳:イリーナ・コンスタンチノヴナ・チビノワ/衣裳デザイン補足:ロバート・パージオラ/照明:メアリー・ジョー・ドンドリンガー
指揮:オームズビー・ウイルキンス/演奏:東京ニューシティ管弦楽団

キャスト

コンラッド(海賊の首領):デイヴィッド・ホールバーグ
ビルバント(コンラッドの友人):カルロス・ロペス
アリ(コンラッドの奴隷):イーサン・スティーフェル
ランケデム(市場の元締め):エルマン・コルネホ
メドーラ(ギリシャの娘):パロマ・ヘレーラ
ギュリナーラ(パシャの奴隷):シオマラ・レイエス
セイード・パシャ(コス島の総督):ヴィクター・バービー

海賊の女:カリン・エリス=ウェンツ

オダリスク:シモーン・メスマー、クリスティ・ブーン、レナータ・パヴァム

海賊の踊り:カリン・エリス=ウェンツ、カルロス・ロペス、海賊たち
フォルバン:カリン・エリス=ウェンツ、カルロス・ロペス
ジェマ・ボンド、ルチアーナ・パリス、アレクセイ・アグーディン、ショーン・スチュワート


感想

待ちに待ったイーサン出演の全幕です。前々回の来日公演「海賊」では、私は確か東京公演の初日だけを見ました。そのメインキャストはDVDとほとんど同じで、ランケデムがマラーホフではなくカレーニョだったくらい。イーサンはこの来日公演でコンラッドだけではなくアリも踊っていて、私は直前までイーサンのアリを見ようかどうしようか悩んで、結局見なかったのです。その時に彼のアリを見ていたら、今の彼と比べて思い出す、という楽しみ方もできたんですけどねぇ...


先にイーサンの事を書いてしまいます。彼のアリは、とても尊大で偉そうでした。心持ち顎をあげて舞台中央で繰り広げられる騒ぎを見ているのですが、その腕を腰に当てたり腕組みしたり。まるでアリが影の悪役なのでは思いたくなるような雰囲気すらありました。奴隷というよりはお目付役のよう。

踊りに関しては、今日は俺がメイン!という気合が入っていました。イーサン自身、ABTのツアーに参加するのは久しぶりだったと思うし、そういう意味でも気合が入っていたでしょうね。

何度か舞台に飛び込んでくる時に披露したジュテも高くて鮮やかだったし、パ・ド・トロワなんてアダージョもヴァリアシオンも気迫の固まりみたいな顔で登場して踊り始めましたから。ピルエットにもジャンプを3回混ぜて(たぶん、「センターステージ」の「スターズ&ストライプス」で見せたのと同じで、もっと気合が入りまくったヤツ)客席がどよめいていましたものねー。

公演から数日経ちますが、実はどーしてもイーサンのパ・ド・トロワのヴァリエーション全てを脳内再生する事ができないんです。ところどころ抜け落ちてる。何故かしら、あんなに食い入るように見つめていたのに。しくしく...

ガラの時も思ったけど、イーサンの上半身もかなりゴツくなりましたね。膝の故障の間も上半身はトレーニングしていたせいでしょうか。見苦しい筋肉がついている訳ではないんだけど、大きいなー、と。まぁイーサンの上半身裸をじーっと見続けられるこんな至福の時間もめったにない訳で、そういう意味では「海賊」はありがたいのですが、本人の意志や希望にかかわらず、私にとってはやっぱりイーサンは王子とかノーブルな血筋の役をより見たいかな、、、と。

その筋肉のせいか、踊りの質もちょっと変わった気がする。ずっしりしたというか...重たい踊りという意味ではなくて、相変わらず音楽的だしつま先も身体のラインも綺麗だし、跳躍も素晴らしい。ただ、んー、何だろうなぁ、線が太くなってきた、のかな。いずれにしても、イーサンの復活は本当に喜ばしい。ぜひまた日本のカンパニーにもゲスト出演してね。


さて、あとは駆け足で。

この日のコンラッドはホールバーグ。前日のゴメスが"友達とノリで海賊になってしまった風"だとすれば、今日のホールバーグには"海賊の首領として君臨する気概"のようなものがありました。もちろんゴメスが悪い訳ではなく、私が、彼の持ち味である甘い雰囲気から勝手にそう受け取ってしまうだけの事。

ホールバーグに対して"気概"を感じたのは、2幕でメドーラの願いで女奴隷たちを開放する事で仲間内で諍いが起きたところ。あの時のホールバーグには仲間を怯ませるだけの凄い迫力がありました。感心。踊りも大きくて見栄えがするし、やっぱり綺麗なダンサーだよな、としみじみ。

あとはリフトだけど、前回来日時に比べたらだいぶ上達してるよね。リフトされる側のヘレーラも慣れているだろうし、ワイルズよりはずっとやりやすいに違いない。こちらが「リフトどうかな?」と見ちゃってるせいもあるとは思うんだけど。

パロマとの相性はとてもよいように感じました。なにしろ彼女が愛らしくてフェミニンですごくよかった。どちらかというと苦手なダンサーだという意識があったのですが、今回ちょっとイメージが変わって、すごくいいなーと。調子も良かったのではないでしょうか。少なくとも前回ABTで来た時よりはずっといいと思う。

レイエスのギュリナーラはもう自由自在ですね。彼女を見てしまうと、前日のコープランドにはまだ足りないものがあるのがよくわかる。奴隷のパ・ド・ドゥもよかったけど花園の場が出色で、しかも袖に下がる時に、気持ち良さそうにお昼寝しているパシャに投げキスしたりして可愛かった〜。

ランケデムはコルネホ。この日のマチネでは急遽アリを踊ったそうで、本当にお疲れさま。奴隷のパ・ド・ドゥではギュリナーラをリフトするところで前日のサヴェリエフを思い出すと「むむ、やっぱり高さが...」と思ったりはしましたが、コルネホも十分食えない商人っぷりで楽しかったです。

彼もヴァリには深いグランプリエは入れてなくて、サヴェリエフとも違う振付で踊っていたようだし、マチソワ出演で翌日もアリを踊るとなると、セーブせざるをえないんでしょうね。彼にしてはピルエットなども乱れたりしたのも仕方ないよね、と思いつつ、やはりちょっと残念でした。


ビルバントはカルロス・ロペス。すごーく生き生きと、前日のラデッキー以上にテンションが高くて熱いキャラでした。私が海賊衆としてついていくなら、より仲間思いな感じのするロペスの方がいいかなー、と何となく(笑)。フォルバンも爽快に盛り上がりました。海賊たちの踊りはABTらしくて、こちらの血がたぎりそう。

あと印象に残ったところとしては、オダリスクの第3ヴァリを踊ったレナータ・パヴァムでしょうか。ジリアンに負けないくらいのピルエットを入れて踊ってました。(ジリアンは音楽に遅れず均等に、ふらつく事なく4回転とか入れるので、そこまで盤石ではなかったけども)


という事でこの日もたっぷり堪能しました。前日の方が楽しかったのは確かだけど、それはもう前日の方が超越しちゃってるだけの事で、この日も十分観客を楽しませてくれたと思います。イーサン素敵だったなぁー。白鳥が楽しみです。はい。