2008年11月22日 新国立劇場 オペラパレス

クレジット

振付:デヴィッド・ビントレー/作曲:カール・デイヴィス/舞台装置:ディック・バード/衣装:スー・ブレイン/照明:マーク・ジョナサン

指揮:ポール・マーフィー/管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団

キャスト

アラジン:芳賀望
プリンセス:湯川麻美子
魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ
ランプの精ジーン:吉本泰久
アラジンの母:難波美保
サルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリン
オニキスとパール:高橋有里、さいとう美帆、寺田亜沙子、江本拓、グリゴリー・バリノフ、佐々木淳史
ゴールドとシルバー:川村真樹、丸尾孝子、貝川鐵夫、市川透
サファイア:西山裕子
ルビー:遠藤睦子、冨川祐樹
エメラルド:寺島ひろみ、寺島まゆみ、中村誠
ダイアモンド:西川貴子
アラジンの友人:江本拓、グリゴリー・バリノフ


感想

「アラジン」3キャスト目。芳賀さんと湯川さんの2回目の主演の舞台で、「アラジン」千秋楽を見てきました。この日は3階センターで、3回見た中では一番遠いところからの鑑賞です。


芳賀さんの主演舞台を見るのは初めてでした。「白鳥」のロットバルトがとてもよかったのでこの日をとても楽しみにしていたんです。アラジンとして舞台に登場した芳賀さんは、上から見るせいかけっこう線が細いと感じました。演技的に伝わりにくいのは席の関係もあるのかなぁ。個性としてはアラジンより別の役が似合いそうな気もしますが...そうやって考えるとアラジンという役は意外に演じる人を厳しく選ぶ役なのかもしれない。

踊りの技術としてはかなり素晴らしくて、ピルエットの芯が細くて早く回ったりとか、跳躍がハっとする程鮮やかだったりとかでとても印象に残りました。湯川さんとのパートナーシップはサポート面がちょっと物足りなかったかなぁ。芳賀さんのせいなのか湯川さんのせいなのかはわからないけれど、ちぐはぐな印象が残ってしまいました。

いずれにしても今までの新国にはいないタイプのダンサーなので、芳賀さんが新国でどんな役を披露していってくれるのか、今後の活躍がとっても楽しみです。


湯川さんのプリンセスは、予想通り大人でした。でも、プリンセスの感情が伝わってくる度合いは3人の中でピカ一。脚あげてキープ!な最初の踊りは小野さんの安定感が抜群だったけど、湯浴みの場でのソロ、マグリブ人を誘惑してお酒を飲ませる為の踊りなどなど、いずれも他の2人とは理解度が違う。もしかして湯川さんとビントレーで作り出した踊りなのかなー。見ていて「ああ、そういう事が伝えたい踊りだったんだ」と思う事が何度もありました。

大人な湯川さんが「アラジン」というおとぎ話でどんなプリンセスを演じるのか興味たっぷりだったのですが、一言で言えば思慮深い姫君という感じかしら。自分が下々と違う世界にいるのはよくわかっていて、そんな自分がどうあるべきかも心得ている。書物はたくさん読んで知識もたくさんありそうな。でも、アラジンと出会った時にそういう立場も何もかも忘れて一人の女性としての恋心が一番大事になる、、、というか。

最初から成熟した印象を与えてしまうので、アラジンを好きになる事で成長するという風には見えないのは難点かもしれないけど、この日の舞台が締まったのは彼女の存在によるところもあると思います。


鉄壁のランプの精ジーン、吉本さんは存在感といい踊りのキレといい言う事なしなんですが、ちょっとだけ疲れが見えたかもしれない。吉本さんと中村さんのジーンは呼び出された時のおじぎ1つとっても意味が違っていて、吉本さんの場合は「本来は誰かに仕えるような立場でない人」の威圧感のようなものがあって(中村さんのお辞儀は恭しい)、そこにドラマを感じずにはいられないんです。

そしてマグリブ人のマイレンは、これが見納めだと思うと本当に残念〜。「アラジン」最大の功労者は彼だとやっぱり思います。

あと江本さんとバリノフくんのアラジンの友人ね。彼らのライオンダンスは本当に楽しい!特に後ろ足はバリノフくんだと思うんだけど、その後ろ足のステップがたまりません。あの姿勢で踊ったり江本さんをリフトしたり、いろいろハードだと思うけど、楽しませてくれてありがとう〜。


この日の洞窟の宝石たちも素敵でした。上から見たので、宝石たちがアラジンを導く道になるところもよく見えてよかったです。あの道を通るアラジン、八幡さんと芳賀さんは演技もなにもなくすーっと歩いていっちゃったけど、確か山本さんはキョロキョロとしながら歩いていたような...その方が断然いいよね?

オニキスとパールの男性陣は3階から見た時は第2キャストの男性陣か?と一瞬思ったんですが、どうやら違ったみたい。「ゴールドとシルバー」は丸尾孝子さんが入った組を初めて見たのですが、丸尾さんも確実な人だから。でも市川さんはパートナーが変わるのでやりにくかったかもね。川村さんと貝川さんの組み合わせが見る度にバロックな艶を増していって、見ているこちらがにやけてしまう程進化していくのが印象的でした。すごかったよー、最終日のこの2人の艶っぷり。

サファイヤは西山裕子さん。ダイヤモンドより合っていたかも?海の中というよりスノードームの中のニンフちゃんのよう。彼女の清潔感ある佇まいはサファイヤにはどうか?と思っていましたが、意外に(というと失礼かもしれませんが)すごく良かった!

注目のルビー3組目、遠藤睦子さんと冨川祐樹さん。他の2組ほどドラマティック過多ではなくて、他の組の後だと物足りなく思う人もいるかもしれません。遠藤さんの新たな面が見られたのは大収穫だったけど、冨川さんはこちらの役は割と淡白だったなぁ。あと一歩二歩、濃いドラマを期待いていたので。その分?エメラルドの3人は濃密で、見納めにたっぷり堪能させて戴きました。

ダイヤモンドの西川貴子さんも見たのはこの日だけだったんですが、彼女のダイヤモンドすごくよかった!踊りも安定していたし、なにより「洞窟の宝石たちの頭」的な押しがあるのがいい。「眠り」におけるリラの精のように、アラジンを導いてあげる役だったんだよね。西山裕子さんのダイヤモンドはその点が少し弱かったのだけど、西川貴子さんは見事でした。上から見たせいも...ある?

あとはこの日もダイヤモンドの群舞に感動。あなたたちは本当に素晴らしい!大好きです♪


仕掛けや美術、照明も3階から見たことで効果が最大限に感じられたのも収穫でした。この日は、空飛ぶ絨毯が飛んだ時に客席から拍手が沸いていましたし。

初日は耳に残らないなんて思った音楽も、さすがに3回も見れば頭の中にくり返し鳴るくらいになったし、それだけ作品に愛着も沸いたという事なのでしょうね。もうマイナス点はほとんど気にならず、たっぷり楽しんだ3回目でした。予想通り3組それぞれの物語を楽しませてくれた事がとてもよかったし、カンパニーのポテンシャルが上がった実感があるのも、新国ファンとしてはとても嬉しい。

それで...結局私はやっぱり山本さんのアラジンが一番好き!と思った次第。ファンだからねー。彼の新たな一面が見られたのは本当に幸せでしたから。できれば初日のあの重々しい空気の中だけでなく、2回目の21日にも見たかった、と残念に思っています。でも、こればかりは仕方がないので。