2009年1月18日 東京文化会館 大ホール

クレジット

音楽:P.I. チャイコフスキー/台本:I. フセヴォロジスキー/振付:マリウス・プティパ/美術:V. オクネフ/衣装:I. プレス
指揮:ミハイル・パブージン/演奏:レニングラード国立歌劇場管弦楽団

キャスト

オーロラ姫:オクサーナ・シェスタコワ
デジレ王子:ニコライ・コリパエフ
リラの精:イリーナ・ペレン
カラボス:アンドレイ・ブレクバーゼ

王:マラト・シェミウノフ
王妃:ズヴェズダナ・マルチナ
式典長:ウラジーミル・ツァル
従者:アントン・アパシキン

妖精たち
優しさの精:オリガ・グローモワ
元気の精:マリア・ドミトリエンコ
鷹揚の精:ユリア・チーカ
呑気の精:アンナ・クリギナ
勇気の精:タチアナ・ミリツェワ
4人の王子:アンドレイ・ヤフニューク/デニス・モロゾフ/アンドレイ・カシャネンコ/ミハイル・ヴェンシコフ

宝石の精
ダイアモンド:タチアナ・ミリツェワ
金/銀/サファイア:ユリア・チーカ/アンナ・クリギナ/マリア・ドミトリエンコ
フロリナ王女:ヴィクトリア・クテポワ
青い鳥:アントン・プローム
白い猫:エレーナ・ニキフォロワ
長靴をはいた猫:マクシム・ポドショーノフ
赤頭巾ちゃん:ナタリア・クズメンコ
狼:ニキータ・クリギン
人食い鬼:ウラジーミル・ツァル
人食い鬼の奥さん:アントン・アパシキン
ファランドール:エレーナ・ニキフォロワ/アレクセイ・クズネツォフ
子供たち:高木淑子バレエスクール


感想

このカンパニーの公演はもう4年ぶりくらいになります。毎年行くつもりでチケットを手配はするのだけど、1月は(夏もだけど)毎年けっこう難しいんですよねー。結局行けなくなる事が多い。そうこうしているうちに、ルジマートフが芸術監督に就任。そして指揮のアニハーノフさんが劇場から去ってしまった。1度見たいと思っていたエフセーエワのオーロラ姫も、彼女がマリインスキーに移籍してしまったために、このカンパニーでは見る事がかなわなくなってしまったんですよね...。

今年こそ!という事でシェスタコワのオーロラ姫を見てきました。フォーラムAとオーチャードはできるかぎり行かないと決めているので、今回東京で見るなら「眠り」しか選択肢がなかったんですけど、ロシアーンな「眠り」が見たかったので望むところ。特にこの前見たマラーホフ版で省かれていたガーランド・ワルツと間奏曲に期待してました。


基本的には新国で見慣れたセルゲイエフ版とほぼ同じ。もちろん細かいところは違いますが、オーソドックス(だと私が思う)なバージョンでした。衣装も新国とだいたい似た感じなんですが、後から制作したっぽい1幕の妖精たちと2幕の幻影の場での妖精たちの衣装は色みが強すぎて浮いてる気がする。あと、全体的にチュチュのスカート部は大きめですよね。3幕でわざわざゲストのお出迎えの為だけに純白のガウンで登場するオーロラ、が見られたのも嬉しかったです。

序幕/1幕の王様や貴族たちの衣装はあまりゴージャスな印象を受けなかったのですが、3幕で登場した時は男性陣もみなさんロングのズラに(ほら、ドイツ方面のクラシック作曲家的な...)長いガウン姿で登場したので、あーん?これって100年後のファッションってこと?と思ったんですけど。時代考証とかは全く判らないんで、何となく、ね。


シェスタコワはとても素敵なオーロラ姫でした。1幕では若さと両親の愛に包まれた幸福感と、恥じらいと、そういう感情が自然に発露するオーロラ姫そのもの。ただ...たぶん4人の求婚者や王子が若くてまだサポートが不十分なので、自然シェスタコワに負担がかかっているのがよく判ってしまうんですね。サポートされるというより自分でコントロールしなければならない大変さが見えるというか。結果として、すごくしっかりしたオーロラになってしまった、ようにも感じました。

でもそれはシェスタコワのせいじゃないし、仕方ないと思います。だって、彼女がそうしなかったら、グダグダな舞台になっていたかもしれませんもの。元々プハチョフが王子にキャストされていた、というのが見ているこちらの頭の片隅にあるから余計にそう感じたところもあるでしょうし。ソロでも重さを感じるというか、シェスタコワってもっと踊れる人だったよね?と感じた事も何度かありました。他のダンサーだったら気にならずに「よかった!」と思ったかもしれないけど、シェスタコワに対しては期待値が高いって事なのでしょう。

で、その王子様、コリパエフくんですけども、鷹揚さという得難い特質を持っているようですから、劇場が「王子として育てる!」と思うのも無理はないと思うのです。癖のない素直な踊りだし、背が高くてプロポーションもいいし。見守っていきたいな、と応援したくなるダンサーではあるんです。でも、まだ王子には早いよね、っていう。

シェスタコワとペレンに挟まれての王子役だから余計に大変なポジションだったとも言えますけど、まだ真ん中に立つ押し出しの強さとかオーラは持っていないと思うし、若さに起因するのかサポートの不足に起因するのかわからないけど、頼りなさがあってねー。「ペレンちゃん、せっかく100年待ったんだから、もう少し待って別の王子を見立てては?」と思ってしまいました(笑)。


リラの精のペレンも生で見たのはずいぶん久しぶりな訳ですが、柔らかい雰囲気になりましたねー。オーロラや王子を見守る笑顔はあくまで柔らかく、カラボスに対しては威厳あるフェアリー・クイーン。他の妖精たちとも格が違っていましたし、前日にオーロラを踊ったばかりとは思えないほど安定していて、しかもとても丁寧な踊りでした。脚もこんなにほっそりしていたっけ!と驚く美脚。ロシアーンな「眠り」でこれだけ圧倒的なリラの精を見たのは初めてかも、と思うほどでした。

カラボスはブレクバーゼさん。いやー、素晴らしかったです!意地悪するのが楽しくて仕方ないって感じで、舞台を生き生きと支配してました。でも、そんなカラボスを、腕をさっと上げただけで制圧しちゃうのがペレンのリラの精。ついさっきまで楽しそうにオーロラに呪いをかけていたカラボスが面白くなさそうに退散するのも当然の、圧倒的な美と正義でした。

そういえば、「つむで指をさして死ぬのではなく、100年間眠るだけですよ」っていうリラの精のマイムがなかったなー。ここのはそういう演出なのでしょうか。

1幕の妖精たちと3幕の宝石の精はキャスト変更でほとんど同じメンバーが踊っていました。中ではミリツェワが群を抜いた存在感で、特にダイアモンドのヴァリエーションは良かったです。あとは、アンナ・クリギナの踊りのニュアンスの込め方がけっこう好きかも。彼女、クリギンさんのお嬢さんだったりするのかな?お顔立ちもちょっと似てますよね...

フロリナはクテポワでした。私、たぶん初見。美人さんですよね。プロポーションもいい。でも、フロリナ王女のキャラではないような。それに...もしかして少し音痴さん?プロームはよく踊っていたと思いますが、彼として盤石かというと...もしかしたらちょっとお疲れだったかも。

白い猫のニキフォロワが色っぽくてよかったです。長靴をはいた猫とのやりとりが、会場に受けてました。2幕のファランドールも彼女だったんですね。式典長のツァルが客席を引き込むようなオープンさで演技をしてましたが、3幕では人食い鬼になっていらしたんですね〜。こちらもアピール力があって楽しかったです。シェミウノフの王も同様に客席と対話するような王様でしたね。


えーと、残念だったのは、ガーランド・ワルツで、男性陣の花環の扱いがちょっと雑だった事かな...。そんなところを気にするのは私くらいかもしれませんが、この場面ってオーロラの登場が近づいていく中で祝祭感があって音楽も幸福感に溢れていて、無条件に幸せになれるシーンだと思うんですよね。まぁ、子役さんを含めて大勢が舞台にいるので、花環の扱いも普段とは勝手が違うのかもしれませんが、何しろ楽しみにしていたものですから〜。

あと、間奏曲も思ったほどは幸せに浸れませんでした。ヴァイオリンの音がいまいち好みじゃなかった。私はクラシックの事はさっぱりわかりませんけど、鳴りがよくなかった気が。オケは今回あまり評判よくありませんが、少なくともシェスタコワの踊りにはよく合っていたと思います。ハープの響きはとても豊かだったし、打楽器のダイナミックな音も「ロシアのオケを聴いてるのねっ」て感じでしたけど。けどけど。

数年ぶりで聴く私が「アニハーノフさん...」と淋しくなる位ですから、毎年何回も通ってらっしゃる熱心なファンの方のお気持ちは、、、と思います。2幕のあとの休憩の時に、思わずアニハーノフさん指揮のチャイコ3大バレエのダイジェストCDを買ってしまいましたよ。ええ、もちろん間奏曲が収録されているのを確認の上でね。


1幕65分/2幕50分/3幕50分ってとても壮大なバレエだけれど、これぞロシア・バレエという感じがして、時々無性に見たくなるのです。新国のセルゲイエフ版を最後に見たのが2007年2月で、その後に見た「眠り」全幕はオーストラリア・バレエ、シュツットガルト・バレエ、東京バレエ団のマラーホフ版、とちょっと手を入れたバージョンばかりだった事もあり、むさぼるように見てしまいました。

いろいろ不満も書いたけれど、総合的にはとても楽しかったです。週末という事もあってお客さんの入りもよかったですし、私の周囲は客質もよかったので快適な鑑賞でした。