2009年2月11日 新国立劇場オペラ劇場

クレジット

振付:マリウス・プティパ/改訂振付・演出:牧阿佐美/音楽:アレクサンドル・グラズノフ/美術:ルイザ・スピナテッリ/照明:沢田祐二
指揮:オームズビー・ウィルキンス/演奏:東京交響楽団

キャスト

ライモンダ:寺島ひろみ
ジャン・ド・ブリエンヌ:山本隆之
アブデラクマン:森田健太郎
クレメンス:寺田亜沙子
ヘンリエット:堀口純
ベランジェ:マイレン・トレウバエフ
ベルナール:冨川祐樹
ドリ伯爵夫人:西川貴子
アンドリュー2世王:市川透
第1ヴァリエーション:さいとう美帆
第2ヴァリエーション:高橋有里
サラセン人:丸尾孝子、楠本郁子、堀岡美香、陳秀介、古川和則、小口邦明
スペイン人ソリスト:井倉真未、江本拓
チャルダッシュ ソリスト:大和雅美、グリゴリー・バリノフ
マズルカ:北原亜希、千歳美香子、堀岡美香、大湊由美、小村美沙、酒井麻子
グラン・パ・クラシック:湯川麻美子、遠藤睦子、西山裕子、さいとう美帆、寺島まゆみ、小野絢子、丸尾孝子、寺田亜沙子、マイレン・トレウバエフ、陳秀介、冨川祐樹、江本拓、高木裕次、古川和則、佐々木淳史、今勇也
ヴァリエーション:遠藤睦子
パ・ド・カトル:マイレン・トレウバエフ、冨川祐樹、江本拓、今勇也
パ・ド・トロワ:寺島まゆみ、小野絢子、丸尾孝子


感想

2006年にこの日と同じ主演ペアで見て以来の新国「ライモンダ」。少し改訂が入ったという話なんですが、あまりよくわからなかった(笑)。アブデラクマンがライモンダを強奪すると決めたときに手下(サラセンやスペイン)を集めて指示したのは「お?」と思ったから多分そう?踊りの内容とかも「こうだったけ?」と思ったりしたところはあったけど、具体的にどうとも言えず。

この日は元々貝川鐵夫さんのジャンに山本隆之さんのアブデラクマンという発表だったのが直前に貝川さんが体調不良で降板となり、山本さんがジャン、アブデラクマンをゲスト日と連続で森田健太郎さんというキャストに変更。私は山本さんのアブデラクマンを目当てにチケットを取ったので、それが見られなくなったのは非常に残念でした。

しかし、ふたを開けてみれば寺島ひろみさんと山本隆之さんのパートナーシップが時間をかけて成熟してきたのが判る素晴らしい舞台でした。何といっても山本さんのジャンが非常にさわやかな色香をふりまく好青年だったし、プリマオーラを振りまく寺島さんとのラブラブ度も高かったです。特に1幕夢の場のパ・ド・ドゥは本当にうっとりする程に出色の出来!

貝川さんのジャン・ド・ブリエンヌ デビューがお預けになっちゃったのは惜しいし(お大事にね)、やっぱり山本さんのアブデラクマンが見られなかったのも残念ではあるけれど(しつこいかしら)、急なキャスト変更の中でもよい舞台を見せてもらえた事は幸せでした。


寺島ひろみさんは直前に相手役が変わったりして本当に大変だったと思いますが、舞台を引っ張る気迫と輝きに溢れた見事なプリマぶり。特に最初の登場のキラキラ度といったら!2幕のヴァリアシオンだけが何か異常があったとしか思えない不調だったのですが(のちにご本人のサイトで脚がつっていたとご報告あり)3幕はその分も挽回して見事な姫っぷりでした。

ライモンダとジャンが互いに手をつないだり腰に手を回したりして「二人でアンオー」みたいに腕を上に広げる決めポーズが多用されていますが、今日のこの2人ほどその腕に恋の歓びを感じたペアはいなかったわー。


今回の「ライモンダ」を見て自分で判った事がありまして、それは私の「ダンサーの好み」が、技術的な何かよりも、その両腕の内側にどれだけ感情が見える踊り方をしてくれるか、なのだという事でした。もちろんポジションが正確だとか高く飛べるとかバレエに大切な技術的な事も気にはなるのだけど、それよりも私はたぶん上半身の美しさとそこに込められたsweetnessに魅力を感じるようです。そういう意味でも、今回も山本さんのアームスの美しさと情感にはグっときました。

基本的に新国立劇場バレエのダンサーは、私のその好みを満足させてくれるソリストがたくさんいるのですが、初役で緊張していたのか、ライモンダの友人役を踊った寺田亜沙子さんと堀口純さんは少し物足りなかったかな。特に堀口さんのアームスは好みだと思っていたので、今回はあれ?っと思ったりしました。あの腕を覆うシフォン状の衣装が、今イチ美しく見えなかった事も影響しているかもしれません。あと、これは寺島ライモンダがアブデラクマンに対して露骨に嫌な顔をする役作りだった事もあると思うのですが、クレメンスとヘンリエットにもアブデラクマンに対して凄く厳しい表情で接しているのが気になりました。個人的に、ライモンダと友人たちにはもう少しおっとりと、アブデラクマンに対する礼儀を損なわない程度に対応してくれる方が好みなんです。

そのアブデラクマン、森田さんはなかなか大きくなられていましたね。野性やフェロモンは薄めで、普通に一国の主として知性と風格を感じる。なので、女をクドくのにいきなり乱入したり宝石鷲掴みにして渡すようなやり方には違和感が(笑)。舞台を圧する存在感は流石でしたし、サポートは盤石でひろみさんも踊りやすそうでした。配役変更の中でも、ひろみさんにとっては安心できるキャスティングだった事でしょう。


今日すごく良かったのは夢の場のヴァリエーションを踊ったさいとう美帆さんと高橋有里さん。さいとうさんが第1ヴァリエーションを踊るのを見たのはたぶん初めてだったと思いますが、なんで今まで踊ってなかったの?という位に彼女に合ってました。しっかり踊れているだけでなく音楽的。私が今まで見た中では一番この振付を踊りこなしてたような気がします。この日は音楽もそんなに遅くなかったので、メリハリが効いててよかったです(そのあと2回は、テンポが少し遅くて間延びしちゃったのがもったいなかった。もう〜ウィルキンズさんたら!)。

高橋有里さんは流石の安定感でした。ピシっと決め、ピシっと止める。本当に安心して見ていられるし、主役が踊れる人たちがこういうところを固める贅沢さも感じました。今回は若手キャストが多くてソリストが1幕のワルツや3幕のグラン・パ・クラシックにたくさん投入されているのが贅沢というかもったいないというか。

あとはスペインの井倉真未さんと江本拓さん、3幕チャルダッシュの大和雅美さんとバリノフくんが良かったです。まず井倉真未さんがこういう悪役テイストのカラーのはっきりした役も似合うのが発見。そして江本さんは本当にかっこ良かったですー。彼の色香も貴重だよね。「コッペリア」のフランズもぜひ見たいのですが、スケジュール的にちと難しいか...。そういえば、スペイン軍団にプログラムには名前のなかったバリノフくんが入っていました。抜けていたのは野崎さんかしら?

チャルダッシュの2人は凄かったですよー。初演の時もこの2人がファーストキャストで素晴らしかったのですが、今回も「どうだっ!」っていう。音にピシっと合って、しかもバリノフくんはこの日だけおかずにジャンプでくるくるっと(すみませんねー技の名前はいつまでも覚えられず)入れてくれてました。1つも音から外れない見事なプロフェッショナリズムでした。ブラボーっ。

サラセン人女性群は真ん中の楠本さんが良かったです。堀岡美香さんはココ初役でしたっけ?とても良かったですよ。男性陣(陳秀介/古川和則/小口邦明)もジャンプも高くてよかったのですが、個性として「空気を切り裂く」タイプというよりジェントル系のダンサーさんたちのように思うので、場をさらうところまではいかなかったかなー。小口さんの口ひげ姿は何となく世界のナベアツみたいだった(笑)。

それと、1幕の貴族のダンスでやたら踊りの綺麗な男の子がいると思ったらエリク・T.クロフォードさんでした。顔、腕、脚、どれをとっても付け方が絶妙で綺麗なの。他のダンサーと全く違う。一番奥で踊っていても目に飛び込んでくる位なのですから。彼は今は登録ダンサーだし、契約の時代も私が知る範囲では立ち役などの使われ方が多かったので、踊りの実力とかは私には全くわかりません。新国での評価とか位置づけもどうなのかは知りませんが、この踊りを見た限りでは、ずいぶんつれない使われ方だったのでは、と思ってしまいました。


という訳で、ソリスト陣には大満足でした(書き残した分については他の公演日に記載したいと思うので、よろしければ参照されたし)。ただ、全体的には再演を重ねている割には輪郭のはっきりしない舞台だったという印象を受けたのも事実でして。1つにはオームズビー・ウィルキンズさんの指揮がカンパニーにあまり寄り添ってくれていないように感じた事。この違和感は最終日まで続いた気がします。

それと、若手が多く配された舞台だったのでそのせいもあると思うのですが、ワルツファンタジアも今いちピリっとしてなかったし、初演/再演の時と比べると、舞台から客席にドーンとくるものが少ない気がしたのが少しばかり残念でした。(私の期待値の高さが原因かもしれませんが、それくらい簡単に応えてくれるカンパニーだと思っているんですよ〜)