2009年2月13日 新国立劇場オペラ劇場

クレジット

振付:マリウス・プティパ/改訂振付・演出:牧阿佐美/音楽:アレクサンドル・グラズノフ/美術:ルイザ・スピナテッリ/照明:沢田祐二
指揮:オームズビー・ウィルキンス/演奏:東京交響楽団

キャスト

ライモンダ:本島美和
ジャン・ド・ブリエンヌ:山本隆之
アブデラクマン:冨川祐樹
クレメンス:小野絢子
ヘンリエット:さいとう美帆
ベランジェ:グリゴリー・バリノフ
ベルナール:江本拓
ドリ伯爵夫人:西川貴子
アンドリュー2世王:市川透
第1ヴァリエーション:さいとう美帆
第2ヴァリエーション:高橋有里
サラセン人:丸尾孝子、楠本郁子、堀岡美香、陳秀介、古川和則、小口邦明
スペイン人ソリスト:湯川麻美子、マイレン・トレウバエフ
チャルダッシュ ソリスト:大和雅美、グリゴリー・バリノフ
マズルカ:北原亜希、千歳美香子、堀岡美香、大湊由美、小村美沙、酒井麻子
グラン・パ・クラシック:湯川麻美子、遠藤睦子、西山裕子、さいとう美帆、寺島まゆみ、小野絢子、丸尾孝子、寺田亜沙子、マイレン・トレウバエフ、陳秀介、冨川祐樹、江本拓、古川和則、芳賀望、佐々木淳史、今勇也
ヴァリエーション:遠藤睦子
パ・ド・カトル:マイレン・トレウバエフ、江本拓、芳賀望、今勇也
パ・ド・トロワ:寺島まゆみ、小野絢子、丸尾孝子


感想

この日こそが元々山本さんのジャンを目当てにチケットを取っていた日。11日に寺島さんとの素晴らしいパートナーシップを見てしまったし、体調も不安定でスケジュールも厳しい期間中だったので、ほんの一瞬「13日はどうしよう」と思ってしまった事を告白します(笑)。でも、新国立劇場バレエ唯一のプリンシパルでありながら、1つの公演期間中に山本さんが同じ役で2度舞台に立つ事はそう多くありません。あるとしても私も「なるべく多くのキャストで」と思ってしまうので2度見る事は多くない。あのさわやかジャンをもう1度見られるのはラッキーだわ!と思い、がんばって見に行きました。脇のキャストもこの日しか見られない人も多かったしね。


寺島ひろみさんと山本さんのカップルははじめから恋人同士。その恋人の不在中にアブデラクマンの横恋慕を受けて、「私の好きな人はあの方なのよ!」と一途で、ある意味現代的なライモンダでした。本島さんと山本さんの場合には、2人は親が決めた許嫁っぽいというか(笑)本島さんのライモンダには素敵な許嫁に対する憧れというか妹が兄に寄せる信頼のようなものが見えたりして、そういう意味では寺島さんのライモンダよりぐっと古風だったかもしれません。私が11日の公演で感激したライモンダとジャンが二人で腕をあげて広げるポーズも、愛の歓びとというより信頼感が見えたような。

本島さんは1幕はかなり緊張していたのではないでしょうか。若さゆえか、寺島さんの「舞台をひっぱるプリマオーラ」の後では、どうしても妹分的な印象を受けてしまうのですが、それが今の彼女の個性なのでしょう。ライモンダというキャラクターからすると少しもの足りないところもあるのですが、山本さんのお兄さん系も私の大好物ですから(笑)11日とはまたちがう愛の形を見せていただいたように思います。このパートナーシップがどう化けるかは、今後の本島さんの成長/成熟度にかかっているんじゃないかな。

2幕のアブデラクマンの横恋慕に対する反応は、おっとり上品に困惑する感じで(以前の彼女なら本当に困惑した表情を作ったのではないでしょうか)私好み。この日のみのクレメンスとヘンリエット、小野絢子さんとさいとう美帆さんも、「相手はサラセンの貴人なれど、困っているライモンダの力になりたい」という感じで好感度高し。そうそう、この日はねーバリノフくんと江本拓さんがベランジェ/ベルナールで、本当に甘々sweetな友人たちでした(好きなのよ、4人とも)。

本島さんはだんだんに調子をあげていったようで3幕が一番よかったと思います。3幕のヴァリは気合いが入っていて、彼女から目を離す事ができませんでした。彼女は私の「アームスが語る人」という好みからは外れますが、インタビューなどからまじめで研究熱心な人柄が垣間見える方。個性がはっきりした役だと面白い仕上げをしてきてくれるという印象があります。ただ、ライモンダという役はある程度経験を積んだバレリーナ向けの役だと思うんですよね。そういう意味で彼女の魅力を最大限に生かす役ではなかったと思うし、役が求めるものを彼女が与えられたかというと、それもちょっと疑問です。単に私の好みの問題かもしれないし、いずれにしても踊った本島さんというより配役した側の話、でしょうね。


山本さんのジャンは本日もさわやか好青年。11日よりは少しお疲れだったのか、踊りとしては少しばかり不安定でした。でも、役の上では2度目の余裕か、更に騎士度がアップしていて凛々しかったですわ〜。本島ライモンダが憧れるのも納得です。

アブデラクマンは冨川祐樹さん。冨川さんのアブデラクマンは、徹底的に異文化からの乱入者でした。自国の娘ならばイチコロ(って古い?)かもしれない最大級の賛辞をおくり、愛を得るための手練手管を繰り出すも、このハンガリーの令嬢は困惑し、周囲の人々=西洋文化からは浮くばかり。そんなアブデラクマンが、自分のやる事なす事空回りなのに業を煮やして、ついにライモンダ強奪!という流れは、ある意味非常に説得力がありました。できれば、辺りを払うような威厳というか、場を圧倒するような存在感をまとうようになると、更にドラマの厚みが増すでしょうね。ご本人の優しげな雰囲気が、どうしてもジェントルマンに見えてしまうので(それは冨川さんの個性で、私はとても好きなんですけど)。

ワルツファンタジアは前回より締まって見えました。「川村ポジション」(って私が勝手に呼んでいるだけですけど)に安定度抜群の堀口純さんが入っていたから、私好みだったのかも。他の日にどなたがその位置だったかはわかりませんが、その方が悪いというのではなくて、堀口さんのアラベスクの姿勢がとにかく好みなんです。

で、前述の通り、ライモンダの友人衆、小野絢子/さいとう美帆/グリゴリー・バリノフ/江本拓は甘々な4人。この4人だとバリノフくんが一際ふくらんで見えるなーと2幕でショックを受けていたのですが、たぶん、いきなりの早変わりでスペイン一味として登場する為に、ベランジェの衣装の下にスペインを着ていたのでは。スペインでの彼はそうふくらんで見えなかったから。楽しそうに踊っているので、つい目がいってしまいます。

でも、この日のスペインは湯川さんとマイレン。マイレンのキレキレスペインにも目がいってしまうので、他の人たちは全く目に入りませんでした。湯川さんの事もあまり見られなかったのですが、もしかしてちょっと不調でしょうか?前回見た井倉さんの方が私は好きだったかも。


2幕ではさっきまでライモンダを守っていたバリノフくんがスペインに入っていたかと思えば、3幕ではさっき事切れたアブデラクマン役の冨川さんがグラン・パ・クラシックの一人として踊っていてびっくり。そういえばスペインにもグラン・パ・クラシックにも高木さんのお顔が見えなかった気がする。この日はグラン・パ・クラシックとカトルに芳賀さんが入っていました。カトルは、この日が一番グダグダだった気がします。6日連続公演、ちょうど疲れが出る4日目という事もあったでしょうけど、苦笑しちゃったわ。

1幕のワルツと3幕のグラン・パ・クラシックは牧阿佐美バレエから今さんが入っていました。伸びやかな肢体を持つよいダンサーさんだという印象を受けましたが、こういうポジションに登録ダンサーですらない今さんが入るのは理解に苦しみます。ゲストという表記すらなく、当たり前のように入っているのは不透明な感じを受けるし、今さんにとってもイメージがよくなくて気の毒な気がします。


3幕のヴァリエーションは3日とも遠藤睦子さんで見ましたが、彼女らしい軽やかで晴れやかな踊りを堪能しました。パ・ド・トロワも3日とも、寺島まゆみ/小野絢子/丸尾孝子の組み合わせ。最後のジュテで、まゆみさんが他の2人より一際高いのが鮮やかに印象に残るのです。まゆみさんのサラセン人はゲスト日だけだったのですが、それも見たかったなぁ。

この日は、最初に書いたとおり「この日だけのキャスト」も多かったので、そういう意味でもしっかり楽しむ事ができました。それにしても6日連続。ダンサーのみなさんも相当キツいと思いますが、新国ファンとしてもキャスト違いをたくさん見ようと思うと連続で通わなければいけなくなってしまいます。それはかなり厳しい...。特に今回は他の公演とも幾重にも重なって、集客もなかなか大変だったのでは。個人的には以前みたいに少し間があくと通いやすいんだけどなあ。