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本・雑誌-本のレビュー Archive
レビュー「随想—バレエに食われる日本人—」石田種生
- 2007/12/20 17:30|
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著者:石田種生
出版社: 文園社 (2007/11)
発売日: 2007/11
商品の寸法: 17 x 11 x 1.4 cm
日本におけるバレエの歴史、著者が国内外での経験談、日本と海外諸国との風土や民族性の違いからのバレエ考察、、、などがからみあった『随想』となっています。「バレエに食われる日本人」というタイトルが印象的ですが、その心は、いつまでも「借り物」のバレエから抜け出せず、日本人らしいバレエを作り出せないでいる現状、あるいは職業として成り立たないバレエ業界の現状を物語っているようです。
風土や民族性の見地からバレエ(またはダンス全般)を見るというのは全く持って新鮮であり、非常に興味深いものでした。まずは言葉の問題。”踊りの根底には言葉の抑揚がつきまとっている”のだから、用語が全てフランス語で出来ているバレエを日本語のまま踊ってはいけない、”歌うように踊れ”とうのはそういう事だ、と。
他にも農耕民族と狩猟民族の違いやら、気候の違いやら、そんな感じで繰り出される数々の民族性の違いは、日本人がバレエを踊る事自体が間違いなんじゃないかと、絶望的にもなってきます。ただ、その違いを理解した上で克服する事はある程度は可能でしょうし、更にその違いゆえに日本オリジナルのバレエを生み出す事が必要だろう、というのが著者の持論。
持論を展開する上で、様々なジャンルの本からの引用があり、その読書家っぷりにも感心しました。石田種生さんといえば日本を題材にした作品をお作りになる方ですが、日本にこだわるようになったきっかけや作品を作り上げるまでの様々なエピソードも読む事ができます。
また、本筋からちょっと外れたところにも面白いお話がたくさん。例えば、海外のオペラハウスなどでヘボ歌手にトマトがとんだなんて話を聞くと、「観客はわざわざトマトを持ってオペラを見にいくのか?」なんて不思議に思っていましたが、この本の中に”サン・カルロ歌劇場の前に熟れたトマトだけを売っている店があり、けっこう繁盛したそうである”なんて書いてあって笑ってしまいました。そういう見聞1つでも、私も日本人だなーと笑ってしまった次第。
最後に1つだけ。
推測なのですが、たぶん著者は以前よりこれらの文章を書き溜めていらしたのではないでしょうか。で、出版にあたってまとめあげられたのだと。出典が書いてあるのはほんの一部だったので、いつ頃書かれた文章なのかわからないものも多かったのですが、たぶん中心は最近書かれたものだろうと思います。ただ、いろんな時期に書かれた文章が、書いた当時の時制で書かれているので、読んでいて時々「ん?これはいつ書かれたのだろう...」と本をページを遡ったりして、私には少々読みにくい部分がありました。
しかし、それを除けばとても興味深い本であることは間違いありません。なお、巻末にはバレエ作品/人名等のリファレンスがついていて、とても良心的な本でもあります。作品については現在は上演されていない作品についての解説もありますから(もちろん、それらは本文中にタイトルが出て来た作品たちです)、参考になるのではないでしょうか。
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レビュー「Pas de Deux」
- 2007/12/02 17:30|
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発行:Oberon Books (2008/04)
商品の寸法: 27.6 x 22.8 x 2.2 cm
|amazon.co.jp|amazon.com|amazon.co.uk|
UK版をamazon.co.jpから買ったのですが、現在はUS版の予約に切り替わっているようです。
ベンジャミンとアコスタが表紙を飾るこの立派な写真集は、ロイヤル・バレエの現在のレパートリーである各演目の、過去4年間の舞台写真とリハーサル写真によって構成されています(舞台写真の割合が高いです)。目次に並んだ演目は53。写真家はBill Cooper、Dee Konway、そしてJohan Persson。枚数的にはJohan Perssonの手によるものが一番多く、彼の写真が大好きな私としては、とても”心地のよい”写真集。高かったけど買ってよかった、と思いました。まぁ、私は基本的に”写真集好き”なので、買ってしまうのですけども。
”pas de deux”のタイトル通り、写っているのはメインロールの2人がほとんどです。つまり、近年主役で踊っている人たちの登場回数がとても多い。たとえば都さんの写真は多くはありません。それよりは、コジョカル、ロホ、ベンジャミン、そしてヌニェスあたりの枚数がとても多いです。ダーシーもそこそこあるけど、”たくさん”ではない。男性陣はコボー、ボネッリ、ワトソンあたりが比較的目につくかしら。数えた訳ではないので印象ですけれど。枚数は少ないけれどジョナサン・コープやゲストのロベルト・ボッレ、ケネス・グレーヴェあたりも写っていました。
モニカ・メイソンが芸術監督として上演してきた作品とそこに彩りを与えたダンサーたちの、いわばショーケース的な写真集だと思います。巻末に各演目の製作クレジットもあるので、資料的にも使えるかもしれません。特定のダンサーがお目当ての場合は、登場回数の多い人のファンならば買って外れはないと思います。
収められた写真のうち、リハ写真は全てPerssonによるものです。リハ写真はどの写真も本当に好き。特に、彼の奥さんで昨年引退したジェイミー・タッパーとルパート・ペネファーザーの「誕生日の贈り物」のリハーサル写真が、何気ない写真ながらとても素敵でした(もちろん他にも素敵な写真はたくさんありますよ)。
彼が撮ったステージ写真を他のカメラマンの撮ったものと比べてみると、んー何だろう、やっぱり何かが違うのです。機材的な特質もあるのかもしれませんが、撮っているもの(というか狙っているもの?)が違うような気がするんですね。たとえば「白鳥の湖」はステージ写真もほとんどPerssonが撮っていまして、私はこの「白鳥」の写真はかなり好きです。コジョカルとコボー、そして別のペアのヤノウスキーとゲストのグレーヴェ、それぞれに「瞳」が語っているのをしっかり捉えている。とても美しく、物語のある写真でした。
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レビュー「In the Wings - Behind the Scenes at the New York City Ballet」Kyle Froman
- 2007/12/01 17:30|
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発行:Wiley (2007/10/07)
商品の寸法:24.9 x 19.3 x 1.5 cm
|amazon.co.jp|amazon.com|
ニューヨーク・シティ・バレエのダンサー、カイル・フローマンが写真と文章でNYCBのダンサーの1日(というよりカイル・フローマンの1日)を丁寧に描いた本です。サイズが意外と小さくてB5に近い。写真はたくさん収録されていますが小さいサイズのものも多く、写真だけが目当てならば少々物足りなさを感じるかもしれません。私も第一印象は「あれ?写真の比率が思ったより少ないなー」でした。
でも、一度パラパラと最後まで見てから、もう一度最初に戻ってピーター・マーティンスによる序文を読んだら、なんだか何だか胸が一杯になってきました。なんと暖かく愛情に満ちた文章。彼が書いている通り、これは被写体であるダンサーたちとスクール・オブ・アメリカン・バレエで若い頃から一緒に学び、同じカンパニーで一緒に踊ってきた”家族”によって切り取られた大きな”一族”の日常なのですね。
写真の比率が思ったほど高くないのは、カイル・フローマンが写真だけでなく文章にも注力している(ように受け取れる)からでした。
一人称の、あるダンサーの独白。
時系列に進んでいきます。10:15AM。クラスレッスンのためにスタジオに入るのが最近は気が重い(意訳ですが)という一文で始まる文章にドキっとして、それでじっくり文章を読まずにはいられなくなりました。1976年生まれで1996年にNYCBに入団したフローマンは、一般的には今まさに踊り盛りの年齢だと思うのですが、彼の文章から受ける印象からすると、勢いだけでは踊れない年齢になっているのだな、と感じられます。とてもナイーブでセンシティブな人だ、とつよく思いました。
それはシーズンオープニングの1日。NYCBは1シーズンにかなり多くのレパートリーを上演しますから、シーズンが始まってしまうと、ダンサーにはリハーサルの時間はそうたっぷりはありません。自分の身体の声に一心に耳を澄ませて舞台の準備をし、小さなアクシデントのためにバレエ団付属の治療室で手当をして、そしてステージの準備をして、踊って、喝采を受ける。
観客である私たちにも、ドキュメンタリー映像や各種の書物、そしてダンサーのblogなどで舞台裏での彼らの努力を知る機会が多くなっていますし、頭ではわかっているつもりなのですが、彼が一人称でその一日を浮かび上がらせた事で、そしてまるで彼の隣りで一緒に目にしたかのような「カイル・フローマンの視線そのもの」で切り取られた写真を見る事で、まるで彼の1日を一緒に体験したかのような心持ちになりました。
写真については、上に書いた通り、正に彼が普段目にしているものが、そこに焼き付けられていると思いました。現役ダンサーあるいはダンサー出身のフォトグラファーは多いですが、私が思うに、彼の写真はとても「個人的」ではないかと思うんです。彼の文章が、私にそのような印象を受け付けた可能性は多いにあります。でも、他のダンサー出身の写真家の作品よりずっと、その写真を撮った時に感じた心の声が聞こえてきそうな気がするのです。
たとえば、クラス前のガランとしたスタジオで黙々とストレッチするダンサーの後ろに映る壁一面の鏡。そこには(たぶんダンサーたちの肩より上の位置)に無数の手のひらの跡や背中をつけた跡のようなものが見えます。そこから、たとえばフロアいっぱいにマネージュしたダンサーが勢い余って鏡に手をついたのかな、というような場面が思い浮かびます。ガランとしたスタジオの写真なのに、そこから「動」というか、汗や荒い息までも浮かぶような。
それと、彼自身の約束事なのでしょうね、時間軸で区切られた10:15a.m.、11:30a.m.、、といった章の最初の写真には、必ずその時刻を指した時計が写り込んでいました。そういうところ、いかにもなんだけど好きだな。
ピーター・マーティンスについても、この序文でかなり印象が変わりました。NYCBという大きな一家の「父」であるマーティンスは、ダンサーが別のキャリアを始める事についても暖かい支援をするのだな、と思ったのです(全てのダンサーにそうできるかどうかはともかく、支援できることはしているのでは)。クリスティ・スローンの事もありましたしね。
ところで、カイル・フローマンは謝辞の中で「夫であるAndrew Kirtzman」に触れています。一瞬、これ書いたの誰だっけ?と思ってしまってごめんなさい。Andrew KirtzmanはWCBS-TVの政治記者だそうで、2005年にトロントで入籍しているのだそうです。検索したらけっこう記事が出てきました。
http://ballettalk.invisionzone.com/lofiversion/index.php/t18923.html
http://www.nytimes.com/2005/03/13/fashion/weddings/13KIRT.html
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2008年カレンダーのお話
- 2007/10/13 17:30|
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ロイヤル・バレエとオーストラリア・バレエのメルマガで、それぞれ「ショップで来年のカレンダーを扱い始めましたよ」のお知らせがありました。いずれも、画像はリンク先でご確認下さいませ。
ロイヤル・バレエ2008年カレンダー
リンク先で6ヶ月分だけサムネイルが見られます。「MORE」をクリックすると表紙の大きな画像を見る事もできます。何年か前のようにamazonでも扱ってくれたらいいのですが、今のところ扱いはなし。
オーストラリア・バレエ2008年カレンダー
全月サムネイルのPDFもありました。
今年はABTとシュツットガルト・バレエ、ハンブルク・バレエのカレンダーを買って飾っています。来年用はABTとサンフランシスコ・バレエのカレンダーを入手済。あと1つ欲しいのでどれにしようかリサーチ中なんです。amazon.co.jpで買えるものならバランシン2008カレンダー(↓)が最有力候補。在庫もあるようですしね。

でも、シュツットガルト・バレエとハンブルク・バレエの今年のカレンダーがとても素敵だったので、できることならば来年もそのどちらかを飾りたい。ハンブルクの方は全くヒットしません。シュツットガルトの方は、amazon.deでカラー/モノクロ版とも扱いがありました。残念ながらamazon.co.jpでは今のところ扱ってくれないようですが...。カラー版の方は写真がないので「ホントにこれ?」と思われる向きもあるかと思いますが(笑)、ISBN番号で検索かけたので、間違いないと思います。
→ Stuttgarter Ballett, Format 55 x 46 cm 2008:amazon.de
→ Stuttgarter Ballett, Format 34,5 x 45 cm 2008:amazon.de
写真を見たいという方は、出版社のサイトでカラー/モノクロの両カレンダーとも各月のサムネイルを拡大して見る事ができますので、そちらもご紹介。
→ カラー大判2008カレンダー:出版社サイト
→ モノクロ2008カレンダー:出版社サイト
カラー版はBernd Weißbrod撮影、モノクロ版はGundel Kilian撮影です。私は断然Kilianさんの写真が好きで、2007年版もKilianさんのを買いました。2008年版モノクロカレンダーの表紙、スージン・カンとマリジン・ラドメイカーくんの写真がとっても素敵なので(↓ ね、素敵でしょう?)、来年のもやっぱりシュツットガルト版が欲しいんですけどねー。amazon.deから買うと、本体価格とほとんど変わらない額の送料がかかってしまうのです。悩みどころだわ。

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レビュー「San Francisco Ballet at Seventy-Five 2008 Calendar」Erik Tomasson
- 2007/10/08 17:30|
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発行:Chronicle Books Llc (Cal) (2007/6/30)
商品の寸法:30.2 x 29.7 x 1.3 cm
|amazon.co.jp|amazon.com|
今年の頭の方に予約して届くのをずっと楽しみにしていたのに、amazonからは「入荷が遅れています」のメールが3度も...。シビレをきらし、マーケットプレイスの出品業者から買いなおしてしまいました。
ワールド・ブックスという業者に頼んだところ、出荷メールは来なかったものの10日で届きました。この形体のカレンダーはパッケージ自体が厚紙を挟んでぴっちりとパックしてありますが、それをビニール製のプチプチつき封筒で発送してくれたので、折れなどもつかずに届きました。逆にamazon.co.jpで買ったものの方が角が折れてたりする事がある位だから、大満足です。アメリカの業者さんですが日本語の発送通知書が入っていて、しかも返品の場合の送付先が日本国内になっているのも感心しました。
さて、カレンダー本体のレビューというか、詳細です。全ての写真は、たぶんステージ上で撮影されているのではないかと思います。スタジオにしては奥行きがあるし、ライトの光量も強いから、という推測です。そして、12月の白鳥たちの写真を除いた全てが、とてもクリアにダンサーの一瞬のポーズを切りとっています。思わずしげしげとディテールを眺めてしまいたくなるほどに、クリアです。
公演を撮ったのかドレスリハーサルを撮ったのか、それとも撮影の為にポーズをつけてもらったのかは全くわかりませんが、撮影者に制約があったとしても、それを利点に変えてしまうような上手い切り取り方がされていると思います。なんというか、撮影者の技量も伝わってくるし、ダンサーの美しさも十分伝わるし、奇をてらわずストレートにドンっとくる感じ。
サンフランシスコ・バレエの75周年記念として発行される本を先導した形のこのカレンダー、撮影された演目から、今後へのカンパニーの意気込みまで感じらるようです。チュチュものがお好きな方は物足りなさを感じてしまうかもしれませんけども。サンフランシスコ・バレエのダンサーたちは日本ではちょっと馴染みが薄いですが、写真は本当に素敵ですよ。あ、ちなみに紙質はABTカレンダーより少し厚めです。
表紙:"Spring Rounds"(Paul Tayler)
1月:Yuan Yuan Tan / Damian Smith "The Fifth Season"(Helgi Tomasson)
2月:Sarah Van Patten / Pierre-Francois Vilanoba "Romeo & Juliet"(Helgi Tomasson)
3月:Guennadi Nedviguine "Magrittomania"(Yuri Possokhov)
4月:Nutnaree Pipit-Suksun / Tiit Helimets "The Dance House"(David Bintley)
5月:Muriel Maffre "Quaternary"(Christopher Wheeldon)
6月:Vanessa Zahorian / Gonzalo Garcia "Rubies"(George Balanchine)
7月:Nicolas Blanc "The Vertiginous Thrill of Exactitude"(William Forsythe)
8月:Lorena Feijoo / Yuri Possokhov "In the Night"(Jerome Robbins)
9月:Katita Waldo "Quaternary"(Christopher Wheeldon)
10月:Kristin Long / Pascal Molat "Artifact Suite"(William Forsythe)
11月:Tina LeBlanc" Chaconne for Piano and Two Dancers"(Helgi Tomasson)
12月:"Swan Lake" Helgi Tomasson
なお、出版社(Chronicle Books)の商品ページで、表紙写真をクリックすると裏表紙に並んだ各月のサムネイル画像が(小さいですが)見られるようになっています。
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